◎学生100人アンケート 就活への意識低く  UNN関西学生報道連盟では就活の3月解禁に関し、加盟9大学(京阪神、関関同立、京女、神女院)の学生を中心とした100人にアンケートを取った。  「就活の短期化に賛成か」という質問には、「はい」が44人、「いいえ」が53人、「どちらでもない・無回答」が3人と意見が分かれた。  賛成派のうち、過半数の26人は「もっと勉強や部活動などやりたいことに集中できるから」という理由を述べた。また「就活前に自分の人格をしっかり形成しておきたい」という学生も。3年生の期間を自由に過ごせることにメリットを感じる学生が目立った。  一方で反対派の理由はさまざま。「早く就活を終わらせて好きなことをしたい」という意見が12票を占め、「卒論や夏休みにかぶる」などが続いた。就活後を自由に過ごせなくなることに焦りを感じる学生が多く見られた。  就活の短期化への賛否に関係なく、「就活に振り回されず、やりたいことや勉学に集中したい」との思いを持つ人が全体の過半数を占める結果となった。 ◎「短期決戦」どう変わる?  就活「解禁」が遅れると選考も短期化する。学生側も企業側も従来の戦略では臨めなくなった。  学生にとってのメリットは、学業に専念できることだ。従来の日程(3年生の12月から)だと、早期からの準備が必要だったため、専門課程に打ち込めなかった。「大学生が最も伸びるのは3年生」(大学関係者)と、学業面でのメリットが大きい。一方で、多くが6月に帰国する「留学生組」や、公務員試験対策と並行で就活を行う「二足のわらじ組」は、就活の準備を十分に行えないまま選考を迎えることになり、評価が分かれる。  企業側としても、準備期間が延びた分質の高い志望者が増えることが見込まれる。反面、中小企業などは「大手志向」からあぶれた学生を従来よりも短い時間で選考しなければならないため、人材確保がより難しくなってくる。 ◎「遅延による影響なし」 平成夢学塾塾長・森茂樹さん  「学生は時期を問わず、いつでも企業で働けるという姿勢を取れるように準備すべき」と話すのは、学生の就活支援にあたる「平成夢学塾」塾長の森茂樹さんだ。1996年まであった就職協定によって、就活開始がかつて4年生の10月だったことを例に挙げ、解禁遅延が「政府の『学生らしい生活を送る』という大義名分を果たす上で当然の流れだが、遅くなっても大きな影響はないだろう」と話す。学生は時期にこだわらず、アルバイトなどで大人社会をのぞいてほしいという。  ありがちな例として森さんが挙げたのが「就活が始まるので、何をするべきか教えてほしい」と聞く学生だ。就活のために行った小手先の体験やテクニックは、面接の段階で必ず「ボロが出る」と話す。森さんは「旅行や部活など、日頃の体験で構わない。その中で物事を答えから逆算しつつその意味を考え、数値表現や箇条書きで話に具体性を持たせることを意識すれば、おのずと社会人に必要な考え方は身に付く」と主張した。  また、森さんが提案する就活対策の1つに「個人経営の店、小さな企業でアルバイトをすること」がある。業務に関わりやすく、商いの基本をじかに学べるという。「学生は若い。一概に言えないが、高校までの知識を切り売りする家庭教師のような仕事でなく、新たに何かを学べる仕事で、社会人の基礎を身に付けてほしい」と話した。 ◎デメリット念頭に計画を 「JOBRASS」運営スタッフ・寺上卓さん  「(就活解禁時期が遅れることに対して)賛否の意見がほぼ同数とは意外」とアンケート結果を受けて話すのは、就活サイト「JOBRASS」を運営するアイデムの学生コミュニケーションチームプロジェクトリーダーの寺上卓さん。まだ就活の厳しさを知らない、あるいは就活自体を意識していない楽観的な学生像が浮き彫りになった。  同社のセミナーを受講する学生にアンケートと同じ質問をした際は、圧倒的に反対の声が多かったという。3月解禁には「準備期間が延びる」、「うまくいけば短期で内定をもらえる」、「学業に専念できる」というメリットがある一方、学生にとって大きなデメリットがあるからだ。1つは「説明会を厳選する必要がある」こと。開始の遅れにより、企業による会社説明会やセミナーの回数が減る。学生の参加できる説明会が限られ、出会えたはずの企業と接触する機会がなくなる可能性もある。もう1つは、「内定が卒業ギリギリになる」こと。卒業論文など、学業への支障も懸念される。セミナーなどに通う就活に関心の高い学生はこうしたデメリットを危惧する割合が高い。「就活に関心の低い学生も、このデメリットを念頭に置いて就活計画を立てなければならない」と寺上さんは話す。  「助走期間が長くなった」メリットに対しても、「企業は学生の準備の質をこれまで以上に期待するだろう」と言及。3年生の1年間を自由に過ごせるとも捉えられるが、より一層主体的で質の高い就活準備が今後の学生には求められる。