◯統合へ前向きか 両大学の動向

 1月18日に府市に向けて提言された新大学構想では、2015年度に両大学の法人統合を行い、2016年度に新大学を発足させると明記。研究面での国際競争力強化や、グローバル人材の育成、産学連携による地域活性化などをコンセプトに、柔軟な改革を行う大学を目指す。両大学の重複する学部学域は一本化させるほか、地球未来理工学部(仮称)や獣医学部などを新設。「選択と集中」によるブランド力の強化を図る。また再編でキャンパスが分散される学部学域については、将来的に大阪市中心部に新キャンパスを設置する見込み。この提言は2月8日の府市統合本部会議で松井一郎大阪府知事、橋下徹大阪市長によって了承された。

 大阪府大と大阪市大は提言に合わせ、文書を発表。「統合は本学の改革の延長線上にある」(大阪府大)、「大阪府大と一丸となり新大学実現を目指す」(大阪市大)と述べ、統合の動きに同調した。

 今後は提言に対する議会と両大学の意見をもとに、8月までに行政が「新大学案」を策定。両大学の学長などによる「新大学推進会議(仮称)」を設置し、新大学の教育、研究分野について両大学の教員が協議する。大阪府の担当者は「大学の意見や要望を十分に反映する。府民の声も拾いたい」とコメントした。

 また、新キャンパス構想について両大学の担当者は「キャンパスごとのガバナンスの確立が課題」(大阪市大)、「学生が在学中にキャンパスを変わる事態は避けたい」(大阪府大)などと回答。大学側は、統合による学生や受験生への様々な影響を考慮するよう府市に求めていくという。

◯影響なしは真か 不利なき統合を
 大阪市立大学新聞「Hijicho」の前編集長、近藤龍志さん(大阪市立大・4年)は編入生で、大阪府立大にも在籍した経歴を持つ。編入後は学生記者の立場から、統合問題の調査にも関わった。

 「統合の話は府立大の学生だった頃からあり、もはや避けられないだろう」と近藤さん。行政の意向を、学生の声が変えることの困難さを主張した。

 近藤さんは今後の動向に対し「せめて、学生の勉強や課外活動に不利のない形での統合を目指してほしい」と訴えた。

◯学生の声 意識やや薄か
 統合問題の一番の当事者となる学生。宮脇拓也さん(大阪市大・1年)は「統合について学生の間で話したことはほとんどない」と話す。同様に、潘孟瀛(はん・もういん)さん(大阪府大・1年)は「学内に掲示もなく、反対の声をあげる人もいない」と述べた。大学側が「在学生には影響はない」と強調しているからか、学生の中で問題意識を持つことは少ないようだ。

 問題意識を明確に持つ学生が少ない一方で、「市大の経済学部は歴史もありレベルも高いので、統合によっていい影響がでるのでは」と語る久保翔平さん(大阪府大・1年)のような学生も。また、運動サークルに所属する山名毅史さん(大阪市大・2年)は「統合によって(サークルが)強くなるかもしれない」と統合に対してやや肯定的な意見もみられた。

【コラム】大阪外大・大阪大統合時は…
 旧大阪外国語大は、2007年6月に成立した改正国立大学法人法の施行に伴い、同年10月1日付で大阪大と統合した。

2006年3月、両大学学長が2007年10月の統合および2008年4月の新規学生受け入れを目標として、統合推進合意書を締結。旧大阪外語大の全学科は大阪大外国語学部として再編、旧大阪外語大キャンパスは大阪大箕面キャンパスとなるなど、実質的に大阪外語大が大阪大に「吸収」される形となった。