関西王者の本領発揮は後半に入ってからだった。「前半は全然ダメ」と振り返った行広監督。立ち上がりが悪いことの多い大院大だが、この日はいつも以上に悪かった。「気持ちが高ぶりすぎた」とPG石原主将。チームを支えるエースの足が重かった。マッチアップしていた相手PG田野につききれない。相手にリズムを与え、苦しい展開になった。

それでも監督はチームの絶対的な支柱を外すことは考えなかった。マッチアップを変え、ディフェンスの負担を減らした。この策が石原、そしてチームにリズムをもたらした。本来の動きを取り戻したエースの突破とC小阪のインサイドの得点で逆転した大院大は30—29で前半を折り返す。

後半に入っても両者は一歩も譲らない。大院大は第3Qに相手に連続得点を許し、リードを奪われる。自慢の速攻が出ず、点差を広げられる。大院大はその直後にTO。TO後はボールを持たない選手の動きを意識した。そこからセットオフェンスでのシュートが決まり始める。ディフェンスも機能し、速攻が増え始める。徐々に点差を縮めた大院大はC野中のブザービーターで同点に追いつき、第3Qを46—46の同点で終える。

そして勝負が決まる第4Q。「全ての力を出し切ろう」。この言葉を発したのは監督ではなく選手たち自身だった。その言葉通り、第4Q開始早々に点差を広げられるも、選手たちの気持ちは切れない。「息があってきた」小阪と野中の両センターでインサイドを支配する。インサイドで得点を重ねると、石原の得点で逆転する。その後もエースの得点でリードを広げた。最後は相手FW谷口が5ファウルで退場し、勝負が決した。

接戦を制し、出場校100校の頂点に立った大院大。「素直にうれしい」と喜びを露わにした石原。監督も「ほめてあげたい」と選手たちを称賛した。しかし、彼らにとってここは通過点に過ぎない。明確な課題は「立ち上がり」。この意識を全員が共有している。「(今の状態では)インカレではやっていけない」と口をそろえる監督、選手たち。初優勝の歓喜に酔いしれることなく、前を見据えていた。


◎大院大 圧勝で決勝進出ー西日本学生バスケットボール選手権準決勝
 大院大は前半、立命の得意とする高さを利用したプレーを粘り強いディフェンスで封じ込め、徐々にリードを広げていった。相手の戦法にうまく対応できなかった立命は、スピードをもって攻撃を組み立てようとするものの、大院大のディフェンスを破ることはできなかった。

インサイドの攻撃や、ブレイク中心の展開が前半戦で機能していなかった立命は後半、外角からのシュートを中心にゲームを仕切りなおそうとする。しかしこれも大院大の策の内だった。「後半は外から打たせるようなディフェンスができていた」と行広監督が話すように、大院大はインサイドを封じ込め、苦しい姿勢でのシュートをどんどん打たせていった。そうすることで、流れを相手に渡さないゲーム展開が可能となった。

大差で迎えた第4Q、ゲームメーカーのPG石原がベンチに下がるも、一年生のPG合田が上手く流れを引き継いだ。合田はC小阪を利用したインサイドでのプレー、自身が切り込む積極的なプレーで魅せ、ついには逆転可能圏内までに追い込まれることはなかった。

まさに圧倒的だった。優勝した前大会同様、厳しいディフェンスでプレッシャーを与えつづけ流れをつかむと、一度も放さないまま試合終了まで突っ切った。
行広監督は、「前半はディフェンスの足が動いていた」と試合を振り返り、選手たちを評価する。

試合後PG石原は、「最初からディフェンスが上手くできていた」と満足気に話し、大院大は決勝進出をかけた戦いを華々しい勝利で飾った。


●西日本学生バスケットボール選手権決勝(6月3日・大阪府立体育館)

  1Q 2Q 3Q 4Q
大院大 16 14 16 26 72
同志社 19 10 17 13 59

●西日本学生バスケットボール選手権準決勝(6月2日・大阪府立体育館)

  1Q 2Q 3Q 4Q
大院大 30 22 23 21 96
立命 16 12 13 26 67