酸化された鉄イオンは主に、赤さびや磁鉄鉱などで2価や3価の状態になることが多いが、ごくまれにそれ以外の「異常な」価数を取ったものも見つかっていた。このような酸化物を含んだ物質は、少しの温度変化によって電流を通さない状態になったり、磁石につく状態に変わったり、加熱により縮んだりするなど、特異的な性質を持つことが分かっていた。  今回の研究では、鉄の酸化化合物に含まれる酸素原子の「リガンドホール」という場所が動くことによって、一連の複雑な状態の変化が起こることが解明された。またリガンドホールの数を調節することにより、温度変化による物質の状態の変化を制御できることも明らかになった。  この研究によって、比較的安価で安全に作り出せる異常原子価鉄イオン化合物が、将来スイッチやセンサーなどの多くの用途で活用できるようになると期待される。