—就活デモを企画したきっかけは何だったんでしょうか
 
就活デモの流れは2009年ごろからあったんですが、たまたま私が2010年の大阪での就活デモを興味本位で見に行ったんです。それに触発されて、私にも出来るんじゃないかと思いました。それで、2011年に去年と同じ勤労感謝の日にデモを行おうと。就活デモを行っている団体が全て同じ団体かというとそうではなくて、今回は私が大阪のデモを見てやろうと思ったのがきっかけです。ただ実際に見て触発されたというのと、自分が就活をやめて進路変更をしたことで心に余裕が出来た。そこで今まで気持ち悪い思いをさせられた就活にアプローチしてみようと思ってデモをやってみようと。だからもし私がまだ頑張って就活をしていたら、デモをやっている余裕はなかったと思います。
 
 
—どういったところに就活の気持ち悪さを感じたのでしょうか
 
私は1、2年生のときは将来のことを何にも考えたことがなくて、それで3年になって就職活動のガイダンスがあって、そこから焦って一気に不安になった。やっぱり不安なんで就活講座みたいなものがあったら行ってみたいなと思って、大学が外部の就活塾みたいなものと提携してやっている就活講座に行って通っていたんですが、なんか講座に来ていた人もみんな不安で、就活の雰囲気に合わせていこうという人ばかりで、なんでこんなとこに来て勉強しないといけないんやろうっていうところに、気持ち悪さを感じて。
 
—そういった気持ち悪さを他の学生と共有したりはしましたか
 
そんなことは言えなかったですね。やっぱり周りも就活の空気に合わせようという、いわゆる「意識高い学生」だったので。それに当時は就活に対する疑問が、疑問として明確になっていなくて。甘えたりはあかんという風に自分に言い聞かせていた。そんときはただ追いつめられていただけで、ただ今思うと気持ち悪かったなと思います。それまで将来のことをあまり考えていなくて、突然就活というむちゃくちゃ不安な状況に陥る。ちゃんとした判断ができなかった。周りに順応することしか考えてなかったんです。けど講座は前座みたいなもので、本当はそこから就活がはじまるんですけど、そのころには私もへとへとになっていましたね。
 
 
—実行委員会としてはどういったメッセージを出そうとしていますか
 
就活生は不安に追い立てられて、主体的にものを考えられなくなっていると思う。それで周りに適用しようとする気持ちばかりが強くなりすぎている。その原因を考えてみると1つ目は新卒一括採用という期間限定性。もう今しか出来ないんじゃないかというところ。そして2つ目は高校までに働くとはどういうことについて何も教わらないし、将来設計について考える機会が与えられないというところ。学校ではアルバイトに必要な労働基準法すら教えられない。それなのに就活ってなったところで主体性を養われていないから、いきなり不安に陥るのではないか。そして3つ目は家庭です。世代によって就活というものは大きく違っていて、今の就活がどのような状況にあるか周囲が分かりずらいので理解を得られにくいということ。最後に就活セミナーとか内定塾とかいう就活ビジネスを展開している企業があるというところ。すべての企業がそうではないけれど、そういうサービスを行っているものの内容を見ると、やればできるとか精神論が非常に多くて、でもここで先の3つの原因があって、こちらに頼ってしまう。そうやって就活ビジネスにお金がおちていくと学生の不安の増大が市場の拡大に繋がっていく。就活生は就活ビジネスにお金を落とすし、企業はより不安を煽ろうとしてくる。でも内定塾に入ったところで内定をもらえるわけじゃないですよね。
 
 
—触発されて実際に動き出す前の一番のきっかけというのは何だったんでしょうか
 
実際に去年のデモを見ていて、デモをやっている人たちが特別な人じゃなくて、そこいらへんにいそうな感じの学生だんたんですよね、見た感じ。失礼ながら自分も出来るんじゃないかという奇妙な自信がわいてきたんです。でも実際にやるとなると、人脈もないし、友達もおらんし。そういう活動もやったこともなかったんで、今思うとかなり無謀なことやったなと思うんですが。一番心強かったのはツイッターですね。ほら、よくツイッターでこういうことやりませんか?っていうツイートが流れてきてたんですよ。それで自分もそれみたいになんとかデモしませんか、というツイートを流して、活動しませんかというツイートをすればリツイートしてくれるんじゃないかと思って。デモの実行委員は6人いて、5人のうち4人はネットを通じて知り会いました。もう一人もイベントを通じてなので、全員偶然ですね。
 
 
—実生活の友人や知り合いに声をかけたりはしましたか
 
しませんでしたし、家族にもこの間初めて言ったくらいで。なかなかこういう活動って普段の生活で関わる人には言いずらい。友達には時間がたってから言いましたけど、すこしひかれてしまって「え、デモ!」みたいな。それでもしつこくデモは恐いもんじゃないよと言いながらお知らせしています。デモって遠い世界のことというような反応なんですね。特に学生は。
 
 
—デモのノウハウもない中でどういった準備をしていったんですか
 
これもツイッターですね。今回私がデモをすることに賛同してくれた人で、デモ経験のある人がツイッターで「アドバイス出来るよ」と言ってくれました。ツイッターにはアドバイザーがいます。当日に向けては、短くて分かりやすいメッセージをつくったり、言葉の準備をしないとと思っています。また夜やるので、明るくして、目立つように考えています。リクルートスーツで来てくれるように言っているので、どうやって目立たせるか分りませんけど。リクルートスーツは就活のことを訴えるに関して一番のコスチュームだと思うんです。みんな真っ黒で、就活のアイコンになっていると思うんですよ。
 
 
—学生にとってデモ参加へのハードルをどのように下げる工夫をしていますか
 
それは今回のデモでまさに目指している部分で、散歩のついでにでもいいので来てくださいなんて書いてますし。私が代表ということで、顔出しもしています。こんなやつがやっているのが分かれば参加もしやすいかなと思います。どうして去年は見るにとどまっていたかと言うとやはりデモにびびっていたんです。どこかカルトチックで。でも実際に見に来たらそんなことはなくて、デモのなかで自分の意見を叫んでいる人をみたら、すがすがしく感じましたね。