毎回、テーマに基づいて作品を制作する。そのためテーマ決めが非常に重要になってくる。今回のテーマは「変容」。現在私たちが使っている文字は遥か昔から「変容」を繰り返してきた。「書く」という目的で使われていた文字は、社会の変容の中で「書」という作品としての意味も持つようになった。また、制作時の心情などから各々の作品も「変容」を繰り返していく。そんな意味から、「変容」をテーマに掲げた。同研究室の学生で、今回作品を出展した中村香央里さん(大教大・修士課程)は「このテーマを決めるのに何度もミーティングを重ね、大変だった」と振り返った。
 

また、幼稚園・小学校・中学校・高等学校などでの取り組みも展示された。その中で小学校の生徒が初めに書いた書と、その書が徐々に変容していく写真が見られた。初めは何も考えずに書いたために字のバランスがうまくとれていない書ばかりだった。しかし構成とバランスをよく考えて練習を重ねると、初めに書いた書とは見違えるような出来に仕上がっていた。学生らは実際に教育現場での取り組みを行うことにより、より子どもたちが書に対して興味を持つきっかけをつくった。
 
 
そして作品づくり体験コーナーは、白紙のBEER型折帖に来場者が文字を書くというもの。来場者はどんな言葉でも、どんな文字でも、なんでも思うままに書を書き上げた。同じく研究室生の根来孝明さん(大教大・修士課程)が「習字は文字をきれいに書くことを追求する。でも書道は芸術的な面をもっているから、文字のきれいさを測るものではない」と話したように、まさにこのBEER折は、来場者の人の芸術的な書を生み出す手助けができた。
 
 
今回で7回目を迎えたBEER展。河本実久さん(大教大・修士課程)は「自分の書制作とは何なのかについて見えた。この展覧会は人生の区切り」と話した。そんな彼女にとって書とは「自分のすべて。書がなくなったら自分がなくなる」というもの。
 
 
これからも、このBEER展や教育現場で書は伝えられていく。河本さんは「より多くの人に書を知ってもらいたい」と語った。