試合終了まで残り1分30秒。点差は7点。最後の望みを懸けて蹴り込まれた関学のオンサイドキックは、左サイドでセットしていた立命のWR田中翔の正面へ転がった。「無我夢中」で伸ばした両手で、しっかりとキャッチしたボールを、誇らしげに高く掲げた。

 昨年の関学戦ではレシーバーとしての役目を果たせず、チームは大敗。「昨年は自分のせいで負けた」と自責の念にかられ続けた。今季もけがで出場がままならず、気持ちばかりが焦った。それでも「つらい時に仲間が支えてくれた」。勝利を決定づけるプレーで、チームへの恩返しを成し遂げた。「本当に勝てて良かった」と号泣した。

 もちろんこの日の勝利をつかみ取ったのは、一人の力ではない。攻守両面で、全選手が自分たちの役割を確実に果たした。勝因は「ディフェンスの頑張りとオフェンスの集中力」(米倉ヘッドコーチ)。オフェンス面でそれが象徴的に見られたのは、第4Qの自陣深くからのドライブ。RB高野橋がランで抜け出し、WR宜本が2本続けて難しいパスキャッチに成功。OLの破壊力を生かした中央突破でさらにダウンを更新し、最後はRB北川の1ヤードTDダイブにつなげた。「オフェンス一丸となってプレーできた」とQB谷口。「1ヤードでも前へ」という意識をおのおのが持ち、それぞれのポジションに求められるプレーを忠実にこなした。                                                                                                                                          

 LB佐藤主将を中心に、ディフェンス陣は試合を通して動き続けた。DLの南や十亀が激しいラッシュでプレッシャーをかけ、DBの荻須や海島がパスターゲットを執拗(しつよう)にカバー。「ボールを奪うということを意識した」(佐藤)。ディフェンスで、抜群の安定感を誇る関学オフェンスから3つものターンオーバーを奪った。

 次節関西大との全勝対決を制すれば、リーグ優勝はほぼ確実だ。とはいえ関大は、昨年29年ぶりに敗北を喫した相手。「(関学に勝っても)まだ全てが報われたわけではない」と佐藤。1年間研ぎ澄ました牙で、赤豹が皇帝に襲いかかる。   

●関西学生アメリカンフットボールリーグ第6節(10月30日・大阪市長居陸上競技場

 

  1Q 2Q 3Q 4Q
同志社(1勝4敗) 3 0 0 7 10
関大(5勝)
 
13 10 10 7 40

  

 

  1Q 2Q 3Q 4Q
関学(4勝1敗) 6 0 0 7 13
立命(5勝) 7 6 0 7 20