○近大・中後 巨人・坂本を三振斬り

 巨人・坂本のバットが空を切った。5回、二死1塁の場面。カウント2-2と追い込んで空振りの三振を奪った。「まさか坂本さんが三振するとは。びっくりっすよ」。グラブを叩いて飛び跳ね、中後は喜びを全身で表現した。

 早大・斉藤ら大学球界を代表する投手が揃う中、5番手としてマウンドに上がった中後。日ハム・中田には安打を許したものの、緩慢な走塁と好守に助けられ二死までこぎつけ、最後は鮮やかな三振締め。人生で初めてという4万人の大観衆の前での投球にも、「初めて投げた(リーグ戦の)立命戦の方が緊張しました」とニヤリ。持ち前の強心臓は相変わらずだった。

 今春、MVPを獲得しブレイクした左腕も、秋季リーグは防御率3.12と不調にあえいだ。「今年の冬は野球人生の中でも勝負の時期になる」と中後。来季は真価が問われる3年目。プロとの対戦で得た自信を、来年は確信へと変えてみせる。
 
○同志社・小林 投打に輝き見せる
 

 試合前、「大舞台の方が力が入る。わくわくしてます」と話していた小林。言葉通り、4万人の観衆の前で、攻守にわたって輝きを見せた。

 4回の守備から途中出場すると、見せ場はいきなりおとずれた。一死1塁の場面。盗塁を試みた代走・小窪を素早いスローイングで刺殺。持ち前の強肩でピンチの芽を摘(つ)んだ。配球面では「攻めのリード」を意識した。内角の球を中心に、早大・大石らを強気にリード。3イニングを無失点に抑えた。「キレ、スピードも(関西の投手とは)違う。リードしやすかったです」。充実の表情で試合を振り返った。

 バットも火を噴いた。6回、先頭打者として打席に立つと、ソフトバンク・大隣が投じた内角の直球を中前に運ぶ。この安打で法大・多木の適時打を演出した。「打てなくてもともとと思ってた。最高です」。打席を振り返ると、端正な顔が思わず緩んだ。

 試合後には「貴重な経験だった。でも、上のレベルには通用しない」と謙虚さを見せた小林。プロと大学生のスイングスピードの違いに衝撃も受けた。目指すレベルはまだまだ上。ただ、大観衆の前で、確かな爪跡は残してきた。

○関学・萩原 東京ドームに快音鳴らす
 

 試合前、萩原は緊張していた。相手は日本野球のトップばかり。緊張をみせる萩原に高校の先輩中田(現日ハム)は「思いっきりやれ」と話しかけた。
 
 第一打席。1球目はボール。2球目はファール。中田の助言通り、思い切り振り抜いた3球目は中前へ。西武・平野から関西一の大砲が東京ドームに快音を聞かせた。試合後「チームメイトにもプロの球打って来いって言われてたんで良かった」とホッとした表情を見せた。
 
 打てば長打が期待できる萩原だが、彼にも弱みがある。守備だ。今年1年間で5つの失策を記録。秋リーグ終了後には課題は「守備」と即答するほど。その上1年ぶりの一塁の守備。ただでさえ緊張する試合に「ドキドキでした」と振り返るも、最後、三塁手からの送球もしっかり捕球。無失策の結果に「本当に良かったです」とこの日一番の笑顔を見せた。
 
 2年目となる来季。若き主砲が課題の守備に磨きをかければ無敵間違いなしだ。大器の片鱗をうかがわせたこの日。関西一、いや大学一の大砲から目が離せない。

○近大・若松 見せ場なしに終わるも収穫あり
 
 大学代表は24人。その中でDH4番に選ばれたのが近大の若松だ。今年は怪我に悩まされた1年だったものの、昨秋は2年生にして首位打者を獲得。0.483の高打率を叩き出した関西期待の選手である。
 
 しかし試合では本領発揮とはいかなかった。4打席ノーヒット。4打席目は大きく伸びたが右翼手にスタンドぎりぎりの所でキャッチされアウトとなった。
 
 試合後「今の自分では通用しません」とはっきり一言。実は今、フォームを改良中の若松。負けを認めた上で「今日の試合でフォームのイメージが湧いてきた」と期待できるコメントも。
 
 来季は主将としてチームを引っ張る立場でもある。「今日打てなかった悔しさをバネにこの冬頑張ります」と話す目は真剣そのもの。苦い経験を生かして、来季こそ完全復活。新たなフォームで主砲らしいプレーを期待したい。

○榎本保・大学日本代表監督の話
「(プロを)一泡ふかすことはできなかった。ただ、ピッチャー、バッテリー中心にがんばってくれて、勝ちに等しいゲームだった。この経験を生かしていきたい」。

 

●U―26NPB選抜―大学日本代表(11月22日・東京ドームで)

 

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大学日本代表 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0
U―26NPB選抜 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0

【大学日本代表】斉藤、乾、澤村、東浜、中後、大石、野村、西嶋、菅野-小池、小林、杉山

 

【U―26NPB選抜】前田、大嶺、平野、金刃、久米、大隣、唐川、由規、山口-銀仁郎、嶋