「蕭一傑」。名前が告げられた直後、緊張した面持ちでじっとテレビ中継を見つめていた蕭投手の頬が緩んだ。詰め掛けた報道陣から拍手が起こる中、監督と硬く握手を交わすと、やっと小さな笑みがこぼれた。

 蕭投手は台湾出身の留学生で、大学公式戦の通算成績16勝1敗、防御率0.63を誇る本格派右腕。「持ち味」と自負する直球はMAX148km、カーブやスライダーなど多様な変化球と、豊富なスタミナも兼ね備えている。今回のドラフトでは、二度の抽選に敗れた阪神の、三人目の一位指名を受けた。

 記者会見で、今の気持ちを聞かれ「ほっとしている」と一言。一年目の目標を「一軍に入ること」と話し、「巨人打線と対戦して、あの強力打線を抑えてみたい」と意気込んだ。また5年後、10年後には「チームのエースなど、役に立てるような投手になっていたい」と答えた。

 高校入学を機に日本へ渡った蕭投手を悩ませたのは、やはり文化の違いや言葉の壁だった。今では流暢に日本語を話すが、大学入学までは言葉で苦労をしたという。また練習量の多さにも苦労をしたと話し、会見ではプロの練習量にも耐えられるという自信をのぞかせた。

 台湾に住む両親とは毎日電話をしている。プロ入りが決まった直後もすぐ電話をかけた。「尊敬する人物は、自分のために苦労してくれた父」、「(プロ入りを機に)両親に恩返しをしたい」と家族の絆は固い。

 憧れの台湾の野球選手は元西武の郭泰源投手。「オリエンタル・エクスプレス」の異名を持ち、西武黄金時代の立役者の一人となった郭投手のような活躍を目指し、蕭投手は2月からのキャンプに臨む。