ここ数年は1部と2部をさまようエレベーターチームだった同志社。だが、今の同志社にその面影は全く無い。昨年度関西リーグで旋風を巻き起こした藤色の戦士たちが、「強者のサッカー」で開幕白星スタート。早速、今シーズンの優勝候補に名乗りを上げた。

 美。今日の同志社の攻めを端的に表現するとすれば、美しい。「チームとして良いスタートが切れた。満足している」と望月監督が話したことにも、ためらいなく頷ける出来だった。「(北森が)見えてた」(荒堀)。「来るかなと思って走った」(北森)。前半16分、MF荒堀(2年)のロングスルーパスに抜け出したFW北森(3年)が左足で先制弾。1-0で前半を折り返した。

 待望の追加点は後半5分。MF楠神(3年)が相手DFの裏にスルーパス。1人経由したボールを北森が右足シュート。相手キーパーが弾いたところを荒堀がヘッド。「たまたまこぼれてきたんで」と荒堀は謙そんしたが、このゴールで試合は決まった。その後は完全に同志社の独壇場。ドリブル、ロングパス、ヒールパス、ダイレクトパス。同志社サッカーの魅力を余すことなく見せつけた。

 前半終わりごろの悪い時間帯も、愚直に丁寧にボールを回して攻めの姿勢を貫いた。2点リードしても、指揮官はFW2人を投入した。あくなき「理想のサッカー像」の追求。安易に「守ってロングボールでカウンター」という戦術には逃げない。かつてとは違う、「強豪」としての同志社がそこにあった。

●2008年度関西学生サッカーリーグ第1節(4月6日・大阪長居スタジアム)
 

同志社 2 1-0 0

京産大

1-0

北森(前半16分)

荒堀(後半5分)

得点者  

 

桃学大 2 0-0 0

姫獨大

2-0

岡田(後半9分)

船津(後半28分)
 

得点者  

○試合分析(同志社)
 システムはオーソドックスなボックス型の4-4-2。目を見張るのは中盤の4人だ。オフェンシブハーフに楠神(3年)と荒堀を配置。楠神のドリブルは関西では別格の破壊力を持ち、荒堀の運動量と高いロングフィードの精度が攻撃のエッセンスとなっている。ダブルボランチには大森(3年)と徳丸(2年)が座る。大森の2列目からの飛び出しは相手守備陣を混乱させ、徳丸は高い得点能力を持つ。この試合ではFWの北森が中盤の組み立てにも参加。元MFでパスセンスのある北森も加わるパス回しは、まさに華麗。関西で一、二を争うほどレベルの高い「魅惑の中盤」が同志社の売りだ。

 最終ライン、センターバックにはキャプテン森本(4年)と永戸(3年)が君臨。フィジカルでこの2人が負けることはそうそうない。右サイドバックの井上(4年)もこの試合では安定感あるプレーを披露。的確な読みと機を見たオーバーラップで相手サイドハーフを抑えきった。

 ただ、質が高い攻めが出来るがゆえに、決めるべきところを決められないシーンが目立つ。相手ゴール前でご丁寧にもショートパスを繋いだり、「綺麗に崩して点を取る」ことを意識し過ぎている。相手が引いて高速カウンターの戦術を取ってきた場合、攻めあぐねた末にワンチャンスを決められて勝ち点を取りこぼす怖さがある。この試合でも、「相手のトドメを指す2点目」がすぐに奪えなかったし、相手の低く鋭いクロスに手を焼くシーンが何度か見られた。泥臭くともゴールにこだわる姿勢、全国で戦うためにはそれが必要だ。関西で通用するメッキが、関東では剥がされる。今シーズンの同志社には全国でも十分戦えるポテンシャルがあるだけに、これからのプレーに期待したい。