3D仮想空間に参入する大学
「セカンドライフ」の世界では、大海の中にSIM(シム)と呼ばれる島が点在し、島上でプレイヤーは分身を操作し、現実の通貨と交換可能な仮想通貨で服を買い、着ることができるなど、現実の世界とほぼ同じ生活を楽しめる。現実と異なる点は、民族や言語による境界がないことだ。そのため、様々な国のプレイヤーと自由にどこでも出会うことができる。世界で1000万人以上が登録しているこの大規模な仮想空間に実在する企業が続々と進出し、商品販売などが行われるなど、その規模は日増しに拡大している。
企業だけでなく大学も「セカンドライフ」内で研究成果を発表するなど、様々な取り組みを行っている。その一例として、京都、関西の企業や大学が共同で行っている「Kyoto 3Di Lab」がある。3Dインターネットビジネス研究会の実証実験分科会はリンデンラボ社から島を買い取り、取り組みに参加している大学や企業は島内の施設で研究成果の発表や広報活動などを行う。大学からは、立命や京大などが参加している。同志社が近日参加予定という。
立命では大学広報によるPRビデオ上映などを行う実証実験のほか、映像学部の島内施設での講義実施などユニークな取り組みが行われている。
ラジオからテレビへとメディアが代わったように、「これからはネット上にあるものが3D化していく。現在はその過渡期」と細井教授。3D化した後のネット社会に「大学が応じられるよう、加えて、その対応は大学として有益なものであるかを確かめるために実験を行っている」と続ける。取り組みは今年末で終わるが、その後も立命は独自で実験を継続していく予定という。
現在「セカンドライフ」を快適に操作するためには、高い処理能力を有したパソコンが必要で、このことが利用者を増やす上での問題となっている。しかし、技術が発達するスピードは早く、「1,2年後には当時高性能といわれていたパソコンを消費者が普通に買える値段になる。高性能なパソコンが普及すれば、3D仮想空間が日本で爆発的にヒットする可能性はある」(細井教授)。大学を目指す年代の利用者が増えれば、大学は魅力をアピールする場を新たに持つことができる。また、規模が拡大することで、技術力を企業などに示す場が増え、ブランドを高めることもできる。
3D仮想空間に「これからより多くの大学が参入してくるだろう」と細井教授は考える。変化するネット社会に対応するため、大学は「今までは考えられなかったことを考えるようにしなければいけない」(細井教授)。
コメントを残す