「地元に戻って来れて嬉しい、お世話になった人に恩返しをしたい」。愛媛のサッカー少年が、プロとして故郷に帰ってきた。

 「気がついたらボールを蹴っていた」ことから始まった深水のサッカー人生。立命では2年からスタメンに名を連ね、3年では全国制覇も達成した。輝かしいその経歴は、幾度もの挫折を乗り越えて掴んだものだった。

 小学1年からサッカーを始め、中学からは愛媛FCJrユースでボランチとしてプレーした。四国ではトップレベルの実力を誇るチームだったが、初めて挑んだ日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会で全敗。「初めて全国と四国の違いを知った。四国のレベルで満足してたらあかん」。悔しさを胸に愛媛FCユースへ昇格するも、当初出番は与えられなかった。「(一段レベルの高い)ユースやし、もともとすぐ出れると思ってなかった、筋トレとか努力はしてたんですけど」。だが、サッカーを始めた頃からヘディングには自信があった深水に、当時の監督がセンターバックへの転向をアドバイスすると、努力が実りスタメンに定着。最終ラインを主戦場とするプレースタイルが、ここで確立された。

 「大学で4年間自分の力を磨いて、プロにチャレンジしよう」と考えて、立命に進んだ深水。2年から主力として活躍し、そこから3年連続で関西選抜にも選ばれた。平成18年度第30回総理大臣杯を制し、全国の頂点にも立った。「全国の高いレベルでやれて、経験が積めた」。順風満帆だった立命と深水だが、平成19年度関西学生サッカー春季リーグでまさかの最下位、2部降格。さらに自身も春季リーグ3節目にひざを怪我し、かつて全国を制したチームの転落を、ただ見ていることしか出来なかった。「サッカーが出来ないのが辛かったし、チームのために何も出来ない自分がふがいなかった。俺何してんねやろ、って」。3ヶ月間のリハビリを経て実戦復帰はしたが、今もなお完全復帰は果たせていない。

 大学サッカーに入った当初は「体の強さが高校でやってたレベルとは違うと思った」。だが、「ヘディングとか一対一とか、センターバックでやっていく上ではそんなに不安は無かった」と話す深水。「ヘディングと一対一」への自信を深めた深水が、これからはプロの世界に足を踏み入れる。「プロは24時間サッカーのことを考えられて、良い環境でサッカーをやっていける。自分の通用するところをもっと磨いていきたい」とプロへの意気込みを語った。

 「今はまだ怪我してて別メニューで、みんなと一緒にサッカー出来てないんで、まだまだこれからです」。これまで、いくつもの挫折を乗り越えてきたセンターバックだ。屈強なのは体躯だけではない、立命で手にした自信を胸に、怪我という挫折も乗り越えてくれるだろう。故郷愛媛で、深水の新たなサッカー人生が始まった。 

●深水章生(立命館大学-愛媛FC)

1985年9月30日生まれ、愛媛県出身のDF。 平成17年度関西学生サッカー秋季リーグ優勝、第30回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント優勝。平成14年U-17日本代表。平成17、18、19年度関西大学選抜。

○Jリーグで対戦してみたい選手を聞かれて。

「藤田くん!」と即答。昨シーズンJ2日本人得点王の藤田祥史選手(サガン鳥栖)は、深水の2つ上の立命OBだ。「大学の頃から頼りになる選手やったんですけど、今はもっと上手くなってるんやろなぁと思う」。