社会人王者の壁は厚かった。関学は挑戦者として、果敢に攻めるも松下電工の地力に屈した。

 日本代表が3人並ぶ松下電工のDL陣は強力だった。ラン攻撃は通じない。前半終了時点では、最大28点差をつけられた。それでも、QB三原は点差以上の手ごたえを感じていた。「前半やってみて勝負できるレベルにあるとわかった」。後半は、怒涛のパス攻撃を展開。エースWR秋山などへ3本のTDパスを立て続けに決め、7点差まで迫った。だが、その後、連続でTDを奪われ突き放された。

 敗北したが、三原は大会記録となる合計パス553ヤードを獲得する活躍を見せた。結果として、3本のインターセプトを被り、2本をリターンTDへと結びつけられたが、「勝負しにいって投げたので後悔はない」。鳥内監督は「ここまで来れたのは三原のおかげ」と司令塔を讃えた。

《悔し涙でさらなる高みへ QB三原》

 普段はクールな三原の目にうっすらと涙が浮かんだ。「悔しかったですね。純粋に」。学生最高QBの噂に違わぬ、力を発揮した。

 プレー中に受けたタックルが原因で両足をつるアクシデントにみまわれながらも、パスを連発。絶望的な点差から一時は1TD差まで追い上げ、社会人王者を奮えあがらせた。「こんなに投げたことなかったので気持ちよかった」。

 卒業後はアメフット部のない王手広告代理店に就職。選手を続ける気はなかったが、「どこかのクラブチームに入れてもらおうかな。もう一段、自分は上がれると思えてきた」。試合を通じて、さらなる高みが見えた。

《負けても堂々 OL岡田主将》

 チームを支えつづけたOL岡田主将は試合のほとんどをベンチで見守った。4日前の練習中に右膝を脱臼。満身創痍の状態で、前半と後半の最初のプレーには出場したが、合計で10回ほどの出場に留まった。

 「自分は出れなかったが、いい試合だった」。準優勝の表彰を受けたときも膝は抜けていたが、ゆっくり堂々と胸を張って歩いた。後輩には「勝ってほしい。それだけ」と日本一の夢を託した。

《兄弟日本一ならずも、悔いはなし WR榊原》

 弟も6年前にTEとして関学のライスボウル初制覇に貢献した兄に続きたかったが、あと一歩届かなかった。WR榊原は第3QにTDレシーブを決め、猛追の原動力となった。

 「兄に『後悔だけはするな』と言われたが、それはない。もう同じメンバーで試合ができないと考えるとやっぱり寂しい」と話した。

《前・副主将立ちはだかる 松下電工OL生田》

 一昨年、副主将として関学を5年ぶりの学生王座「甲子園ボウル」出場へ導いたOL生田は、今度は母校の敵として松下電工のスターターで出場した。「うれしいけど、複雑な気持ちだった」。試合では、DL國方やDL村上とマッチアップ。「二人とも上手い」と舌を巻いた。

 「顔を合わせたくない」と笑って話していた生田だが、試合後、鳥内監督に挨拶。恩師から「『完敗や』と言われました」と話した。

●日本選手権「ライスボウル」(1月3日・東京ドーム)
 

  1Q 2Q 3Q 4Q
関学 0 3 21 14 38
松下電工 14 17 7 14 52