●決勝のTDダイブで日大撃破
 試合終了まで残り6秒。RB横山が残り1ヤードにも満たない距離をダイブで押し込んだ瞬間、長居陸上競技場は関学ファンの歓声で揺れた。
 歴戦のKGブルーの戦士たちが子どものようにはしゃぎあった。昨年あと一歩で届かなかった夢。それも、甲子園ボウルで30年ぶりに永遠のライバル日大を破っての学生日本一の座だった。
「皆さんの声援はホンマに感謝のひと言に尽きる」。岡田主将はファンへの感謝を胸に、賜杯を掲げた。
 歴史に残る死闘を制した。逆転に次ぐ逆転。勝利の女神は最後まで、どちらに微笑むかわからなかった。
 現役時代、甲子園ボウルに4回出場し、4回とも日大に敗れた鳥内監督は「自分が戦ったときのまま日大は力強く、よく鍛えられていた。力は向こうがナンバーワン」と日大を讃えた。

●どん底から復活のRB横山
 どん底を味わった男が最高の舞台で輝きを放った。
 決勝のTDをねじ込み、この日獲得した5ヤードで計3TDをあげたRB横山は胸を張った。
 残り6秒、第4ダウンの攻撃。それまで、QB三原が2回残り1ヤードから中央突破を図ったが失敗した。次にゴールラインを超えなかったとき、関学は事実上の敗戦。ファンの期待とプレッシャーがフィールド上の関学イレブンに圧し掛かった。
 「やればできる」。最後の攻撃選手に選ばれた横山は
自分自身に言い聞かせた。 2年春に椎間板ヘルニアを患い、一時は動くこともままならなかった。4年春になっても、思うように調整が進まない。アメフット選手として、まさに地獄の日々。それでも、部活を辞めなかったのは5年生コーチの支えがあったからだ。
 「恩返しがしたい」。背番号2が白いラインを超えたとき、全ての思いが解き放たれた。昨年、5年生コーチが叶えられなかった夢を自らの力で果たし、雄たけびを上げた。

●関学を学生日本一へ導いたエースQB三原
 学歌「空の翼」を誇らしげに歌った。「自分の中では一番手ごたえがあった試合」。普段は冷静なQB三原も、興奮を抑え切れなかった。
 前半は、体格で勝る日大のDL陣に苦戦。パスを通しても、WRが強烈なタックルで後ろに倒され、ゲインが奪えない展開が続いた。それでも、「逆転TDを取られた次のシリーズ、TD取れなかったら負けという気持ちでやった」。決して、気持ちを切らすことはなく試合終了間際の逆転劇を演出した。
 「4年生の中では言わなくても立命戦の時と同じようなムードになれた」。あと、もう1回このメンバーで戦える。三原は素直に喜びをかみ締めた。