前半6分、同志社はSH東郷のトライで先制するものの、3分後に同点トライを許す。しかし前半終了間際にゴール前5mでモールを形成しHO諸隈がトライ。リードして前半を折り返した同志社だったが、「BKでラインブレイクされ、ディフェンスが乱れてしまった」とWTB宇薄が振り返るように不安を残した前半だった。
 迎えた後半、宇薄が話すようにBK陣の乱れを突かれて3連続でトライを奪われ逆転される。「関西で通用したタックルが決まらなかった」という主将・前川の言葉通り筑波大にしぶとく前へ運ばれた。
 15点差、ノーサイドまで残り10分。だが、同志社は諦めない。例年の課題とされていたFW陣はリーグ戦を通して成長し、スクラム、ラインアウトでは互角以上の戦いを見せる。負傷明けの宮本、森田も献身的にボールを前へ運ぶ。後半35分、関西リーグでもNO8としてスクラムを率いた羽田のトライで5点を返すと、ロスタイムには1年時からBK陣のエースとしてチームを引っ張ってきた宇薄もトライを決めた。しかし、追撃もここまで。あと1トライで同点、キックが決まれば逆転だった。
 ノーサイドの笛とともに、同志社フィフティーンがピッチに倒れ込んで泣きだした。昨年は関西リーグで王座を奪われ、春には部員の不祥事で2か月間の公的活動を自粛した。今季の開幕戦では天理大に32年ぶりに敗北。まさにどん底だった。それでも、泥臭く攻めるラグビーで王座を奪還し、臨んだ選手権。またも関東の壁に弾かれた。
 「手さぐり状態で、今まで経験したことのないチーム作りだった。それでも、今日は今年1番の状態で臨んだ」と中尾監督は敗戦にも悔いない様子で話す。主将・前川も「もちろん、負けたので満足していない。でも、ノーサイドの笛がなった時は全員でここまでこれてよかったと思った。同志社でラグビーができてよかった」と顔を上げた。
 同志社の長い1年が終わった。しかし前川はこうも言う。「同志社は1回戦で負けるようなチームではない。(後輩たちには)勝って欲しい」。同志社の挑戦は続く。