速記ブームから数十年、若者たちの文字離れが著しいといわれる現在。文字と格闘する若者たちがいる。

   年2回行われる全日本学生速記部競技大会(以下、全日)では、参加選手がそれぞれ自分にあったレベルの級に出場し、総合得点により勝敗が決定する。レベルが高くなるほど、最高得点は大きくなるが、1分間に書かなければいけない文字量が増える。

   以前は関大の一人舞台だった全日だが、近年状況が変わりつつある。早大、関学がじわりじわりと王者との差を詰めてきた。今大会では、最高レベルであるA級1位の座を早大に許してしまった。「他の大学も強くなってきた」と森川主将。

   それでも、王者を守り切った。そこには「負けたくない」気持ちがあった。大会が目前になると、選手たちは空いた時間全てを練習や反省会に費やしたという。 他大学に負けたくない、追いつかれたくないという、頂点にいる者としてのプライド。何より「自分自身に打ち勝ちたい意思があった」。 

   一方で森川主将は、選手たちには「勝つだけではなく、書くことの楽しさを忘れないでほしい」という。「書いているうちにわくわくするものがある」。その気持ちが、速記を続けられる要因と思うからだ。

   勝ちに対する厳しさと書くことの楽しさ。メリハリを大切に思う、森川主将の姿勢が関大を20年連続の優勝へ導いたのかもしれない。愛知県出身。