近藤さんは京大卒業後、ヨーロッパやアメリカを主な舞台に音楽活動を展開。平成14年には『The 吉原』を発表し、第45回日本レコード大賞企画賞を受賞した。また、アルプス山脈やアンデス山脈など、大自然の中で自由にエレクトリックトランペットを演奏する『地球を吹く』など、独自のスタイルを追求する姿が注目を集めている。同フォーラムで近藤さんは、「京大を出てミュージシャンになる」という自身の風変わりな選択について、振り返った。
 近藤さんは、1960年代後半に京大の工学部入学。その後、軽音楽部に入りジャズにのめり込んだ。父親が鍛冶屋を営んでいることもあって、当時の近藤さんにはエンジニアになるという目標があった。「世界最速のエンジンを作りたかった」(近藤さん)。一方、幼い頃からずっとトランペットに慣れ親しんでおり、「ミュージシャンになる夢も捨てきれなかった」。エンジニアかミュージシャン、どちらを選ぶかで近藤さんは悩んだ。そのとき、近藤さんにある考えが浮かんだ。「ミュージシャンになった方が、笑いながら死ねる」。そう考えたとき、気持ちが楽になった。そして近藤さんは、ミュージシャンになることを決意したのだという。卒論のテーマは『The Struggle for Freedom』。文学部へ転部し、ジャズの文化的背景を知るため黒人文学を学んだ近藤さんは、アメリカにおける黒人の「自由のための闘争」をテーマに設定した。このテーマは、卒業後の生き様を「地でいったようにも思える」(近藤さん)。
 同フォーラムの最後には、近藤さんがエレクトリックトランペットを演奏。力強い音色に参加者は大きな拍手で応えた。参加した井川直幸さん(京大・3年)は「(近藤さんは)自分にはできない選択をした人。尊敬します」と興奮した様子で話した。