【11・12月号掲載】コラム・おんな坂

 肉料理に香辛料は不可欠。粉でしかないけれど、その存在がなければ肉はただの脂肪の塊と化す。

 歌手とファンの関係もそうだ。ファンに歌を届けたい歌手と、応援したいファン。どちらもいるから素晴らしい舞台が完成する。協力して応援する香辛料たち。暗闇に浮かぶ色彩豊かな灯りの鮮やかさには、見ほれてしまう。歌手と歌があるからこそ輝ける存在。添える香辛料だからこそ輝けるのだ。単体では輝けない。

 連続の台風や地震。その時にお世話になるのがツイッター。「皆!地震大丈夫?」と深刻な被害の間から自撮りを晒し、いいねを稼ぐ輩。微小の被害で混乱に乗じ、沢山のいいねと拡散を待つ。この人が有名になったなら_僕も、私も、と連鎖する。お金も発生しない、画面の中に私たちは執着する。皆が身近なもので簡単に主役になれる世界になった。だから隣の人よりも輝きたい。いいねが欲しいと、自分の詳細ををさらけ出していく愚者。そこに残るのは肉という名声ではなく全てを暴かれた空の骨にしかならない。

 皆が有名になろうとしてる。それぞれ違う個性であるのに、その良さよりも有名になりたがっている。けれどもそれは画面の中だけの擬似肉。本物の芸能人にはなれない。いつまで経っても誰かの引き立て役だよね。そんなことを言われた。けれどその力で何かを輝かせることが出来る。だから私は香辛料のままがいい。【川村嶺実】

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