立命館大は10月14日、びわこ・くさつキャンパス(以下、BKC)に2018年を目標に「食科学部(仮称)」を開設する準備を進めることを発表した。「食」を切り口として、総合的に社会や文化を学び、食分野におけるグローバルな人材の育成を目指す学部だ。
「日本の大学では、食分野の研究は遅れている。総合大学である立命大が先駆けとなることに意味がある」と国際食文化研究センター事務局長の井澤裕司さんは話す。世界的に見て「食分野」は成長産業として注目を集め、20年には市場規模が現在の倍に増加すると予想される。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことは記憶に新しいだろう。しかし「社会的需要があるにも関わらず、食のシステム全体を考え、マネジメントできる人材育成がなされていない」と井澤さんは指摘。食科学部(仮称)の開設で「日本の食だけではなく、人類、地球といった広い視点で食をグローバルに考えられる人材を育成する」と話す。
食科学部(仮称)では3つの科目群を定めた。哲学や地理学、歴史学といった文化の観点から食を捉える「フードカルチャー」、ビジネスや環境から食を社会科学的に捉える「フードビジネス」、食品学や調理学、認知科学を学ぶ「フードテクノロジー」。特定の領域を中心的に学ぶことはせず、包括的な授業を開講していく。海外研修や食体験といった、海外でのフィールドワークも重要視し、現段階ではヨーロッパやアジアの教育機関との提携も視野に入れている。語学の分野では世界に通用する発信型英語を鍛えていく。
立命大ではこれまでに地元の草津市をはじめ、北海道や、京都府など全国の地方公共団体と交流協定を結んでいる。食科学部(仮称)でも地方創生を考える上で、交流協定を活かした取り組みを行う予定だという。
初年度の入学定員はおよそ300人を想定し、今後はカリキュラムなどを検討しながら開設を目指す。求める学生像については「食に興味を持った人に来てほしい。『食を通じて世界を変えたい』と考えるような学生が来てくれたら」と井澤さんは話した。また、世界の最先端フードテクノロジーの拠点を引き合いに出しながら「コペンハーゲンやアムステルダムのように、アジアの中心がBKCや草津であると言われるようになれば」と食科学部(仮称)の将来を見据えた。
食研究特別セミナーのチラシ(提供=立命館大学国際食文化研究センター)