国際理解教育の進展めざして 講演会を実施
コミュニケーション教育は、変化の激しいグローバル社会を切り開けるか
現在の日本は、国際「化」社会ではなくグローバル社会の真っ只中にある。教育の分野にもその波が押し寄せており、小学校から授業で英語を学ぶようになったこともその1例だ。今回の「先進的国際理解教育の創出に関す講演会」は、国際社会を生きるいくつかの知恵を与えてくれる。
阪大留学生センター主催の「先進的国際理解教育の創出に関する講演会」が1月26日午後2時から、千里朝日阪急ビルで行われた。会場には大阪府内の高校教諭が多く集まり、教育や国際理解の分野でそれぞれ異なった経験を持つ講師の話に熱心に耳を傾けていた。
講演会は、阪大留学生センター長の古城紀雄さんの「大学で活きた人材を育てるためには、小・中・高での国際理解が必要」という挨拶で開始。大阪府教育センター教育企画部長の清水隆さん、阪大情報科学研究科博士後期課程のサンデーワ・グナティラカさんと阪大コミュニケーションデザインセンター(CSCD)教授の平田オリザさんの3人がそれぞれ講演を行った。
◎清水隆さん
清水さんは、大阪外大(現・阪大)外国語学部英語学科の卒業生。1978年の卒業後は大阪府立の高校教諭として勤務したほか、大阪府教育委員会などを経て現職に。その経歴を元に「これからの国際理解教育の方向性」についての意見を述べた。小・中・高をテレビ会議で結び、イラクからスウェーデンに亡命した人をスピーカーに呼ぶ授業や地域在住の外国人を招いた講演会など学校現場での特色ある取り組みを紹介した。「グローバル市民には、多様性と市民性が必要」と話し、文科省の中央教育審議会がまとめた「教育指導要領」が提唱する「『(変化の激しいこれからの社会を)生きる力』という概念には、グローバル市民としての考えと通じる部分がある」と締めくくった。
◎サンデーワ・グナティラカさん
グナティラカさんは19年前にスリランカから来日。当初から子供たちに母国の文化を紹介するなど、積極的に日本人と交流を持ってきた。あるとき韓国人留学生とともに小学校に招かれた際、質問の時間に児童が投げかけた「韓国には電気はあるか」という質問の仕方を「いくらなんでも失礼だ」と感じたという。そのことから、「1つのことを聞き、調べただけではその国のことはわからない。そのために何より大切なのは、自分が知らないということを知ることだと思う。国によってどういったことが異なるか、国が違っても何が共通なのかということをまず考える必要がある」と意見した。グナティラカさんの体験をもとに語られた話に、みな一様に頷いていた。
講演では世界の言語にまつわる認識についても触れられた。例えば、スリランカでは公用語としてタミル語、シンハラ語そして英語の3つが使われている。そのどれもが重要でグナティラカさん自身がどの言語が優れているかは決められないと述べた。日本においてのアイヌ民族も同じで、日本人も勝手にアイヌの文化を廃止するようなことは出来ないと力強く話した。「グローバル社会の中で文化が失くしていくものがある。しかし、グローバル化されない民族固有の文化が大切」。グナティラカさんがそう講演終了の挨拶をすると、会場からは温かい拍手が送られた。
◎平田オリザさん
「阪大は理系を中心とした大学院大学。その中で理系の学生たちは、他者とのコミュニケーションに少し構えてしまうのではないか」。そう冒頭から指摘した平田さんは、全学の大学院生を中心に研究現場でのコミュニケーション教育と高度教養教育を目指す、阪大コミニュケーションデザインセンター(CSCD)に3年前のセンター創設時代から関わっている。多くの阪大生と接するうち、研究をしていく上での「国際コミュニケーション能力」が足りないのではないかということを実感したという。
しかし、平田さん自身は16歳で高校を休学し1年半をかけ世界26カ国を巡った自転車旅行に始まり、大学3年次に国際教育基金の援助で韓国に留学するなどし、早くから世界と関わる経験を積んできた。また、国際基督教大在学時代に立ち上げた劇団「青年団」の結成から劇作家・演出家として高く評価されている。近年ではフランスを初めとしたヨーロッパ各国や東南アジアなどで「演劇ワークショップ」を通じて国際交流を持っている。その経験から、講演では「演劇」を通して、コミュニケーションの状況を考える形となった。
平田さんは、ひとりひとりの話し言葉の個性を「コンテクスト」という言葉で表現し、コミュニケーションする上では誰もが無意識にコンテクストをすり合わせる作業を行っていると説明した。演劇では、役者はそのすり合せ作業を短期間の間に完成させることを求められているため、「演劇教育を受ければ、誰もが能力を発揮できるようになる」と話した。【中野雅美】









