◎反広告社とは
 反広告社は2012年9月に成立した架空広告会社だ。非営利な悪戯結社として活動している。首謀者の現代表(以下、代表)が単身で創始、現在では全国各地の老若男女40人の団体となった。
 秘密結社である反広告社。その構成員は、世間に素生を公表しない。代表は「電車で隣に座った人間が反広告社の構成員でもおかしくない」と語る。主な活動は、実在の大学や企業を広告主として想定した、広告制作や掲載、SNSでの情報発信だ。
 活動理念は二つある。一つは「理想広告の復興」。本来、広告とは「言葉と写真」で勝負するものだった。ところが現代では、いわゆるステマやバナー広告など、大量露出が広告手法の主流となっている。広告の最大正義は、もはや広告とすら認識されない、一つの「芸術」と化してしまうことだ、と代表は主張する。何度でも検索して自主的に閲覧してしまうメディアが、反広告社が理想とする広告像だ。
 もう一つは「既存広告の否定」。「海外では既に『広告破壊ゲリラアート』は活発。ところが日本ではつまらない広告を破壊する者は一人も現れない。だから自分でやろうと思った」と代表は打ち明けた。また、ただ広告を壊すのではなく、既存の広告を上回る広告を作りたいという。反広告社の原動力は「現在の広告業界に対する憎悪」と「広告への純粋な愛情」なのだ。

 ◎2つのゲリラ活動
 反広告社は、阪大で昨年11月上旬に2種類の広告作品のゲリラ掲載を行った。活動の詳細に迫ると、現役阪大生の反広告社構成員(以下、構成員)の存在が浮上した。理系の4年生という話だが、構成員の素生は不明点が多い。そこで謎の多い構成員の取材を敢行した。 構成員は、入社の経緯について「Twitterで偶然見かけた反広告社の強力なアナーキズムに惹かれた」と語る。阪大でのゲリラ活動のきっかけは「大阪大学ほど退屈で中途半端な大学は無く、全的に許し難い」という反骨精神によるもの。そこで掲示されたのが、構成員の作品「ここから出して」。本人自ら11月上旬の深夜に掲示したという。その後続けざまに、代表の作品「8年生になったら」が掲示された。こちらは全国の他大学にも貼り付けられた作品だ。阪大では、代表自らが平日の白昼に堂々と掲示した。
 国際化が進み、日本は成熟した。今や「何か一つ秀でている人が優秀」という時代ではない、と構成員は語る。一方阪大、特に理系では「阪大生は日本一の研究者たるべき」という、凝り固まった価値観があると指摘した。それにより価値観の似通った学生が一括りにされているという。「大学は、さまざまな学生が多様な価値観をぶつけ合いつつ、広く自由に学び、互いを高め合える場所であるべきだ」と構成員は訴えた。

 ◎阪大×反広告社
 一連のゲリラ活動を踏まえて、代表は「阪大は、恐らく反広告社が公的に最も迷惑をかけた存在」と振り返った。そして「大阪大の誠実な印象が好きだが、阪大生自身は真面目なイメージを必ずしも歓迎してはいない」と分析した。阪大には独自の欲求不満があり、いつか大規模に爆発しそうな、そんな期待を持たせてくれるという。
 「我が国の学歴主義は、捉え方によってはチャーミングな文化。進学や進級、就職ができず自殺するような時代では、誰かがその構造を笑い飛ばす責任がある」と代表は語る。また、どんな活動をしようが、大学生である限りは充実感を得られる事はまず有り得ない。「退屈したドロドロの大学生こそ、いつか何か心底面白い事をやらかすだろう。そういう人間が本当に社会を変える。大学生は、自分の欲望を満たすために四六時中悩み考えるべきだ」と訴えた。
 今後は、既存活動の続行と同時に、インスタレーション・アート(物体のゲリラ展示)の実施も検討しているという。「六本木ヒルズにミッキーマウスの首吊り死体を展示したい」と代表は意気込んだ。また、再び阪大で活動するかどうかについて「何度でもやりますよ」と応じた。