薮中塾グローバル寺子屋の公開イベント

 関西の学生を中心に、憲法改正や中東問題など幅広いテーマについて議論し、自分の意見を発信する力を磨いている薮中塾グローバル寺子屋が10日、豊中キャンパスの基礎工学国際棟(シグマホール)で公開イベントを行った。テーマは「『膨張する中国』と日本の羅針盤」。162人の参加者は、塾生の発表に耳を傾けたり、参加者同士で議論したりして、将来の日中関係の在り方について考えた。

 塾は2013年に設立され、元外務事務次官の薮中三十二氏が塾長を務めている。今年度は25人が在籍。月に1度、国際政治や教育、科学技術などを題材に、塾生同士の議論を中心とした勉強会を実施してきた。1年間の活動の集大成として今回のイベントを開いた。

 イベントは塾生のプレゼンテーションと会場全体での討論の2部で構成。前半のプレゼンテーションでは、経済や軍事、科学技術の観点から中国を分析し、日本が中国との関係を深めるメリットやデメリットについて考察した。

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)と日米が中心のアジア開発銀行(ADB)を比較した班は、中国が現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推進していることに触れ、AIIBが構想内にある途上国のインフラ整備の資金源として役立っていると説明。一方で、16年11月にカンボジアのスン・チャントル公共事業・運輸相が「中国企業に委託して補修した道路は使い物にならない」と発言したことなどを例に、「開発援助にはなっていない」という見方があることも紹介した。

 現在、日本はAIIBに参加していない。日本の参加に否定的な塾生は「AIIBに加わるより、米国と協力してADBの機能を拡充、改善すべきだ」と主張。肯定的な塾生が「AIIBに参加して日中関係を強化することこそが、アジアの発展に貢献する」と反論し、意見が分かれた。

 後半は、「中国と共に東アジア共同体を構築していくことに賛成か反対か」をテーマに、グループ討論やパネル討論を行った。東アジア共同体の構想は鳩山由紀夫元首相が09年に、日中韓・東南アジア諸国連合(ASEAN+3)の枠組みでの創設を提唱したが、頓挫していた。

 今回の討論では、共同体にはASEAN+3に加え、インドやオーストラリア、ニュージーランドも参加すると設定。統一通貨の導入にはこだわらず、経済的、政治的な連携を目指すという条件も付けた。参加者同士の議論では、「構想は日中の対話のテーブルを増やすことになり、賛成」「参加国間での歴史認識や人権意識など価値観の隔たりが大きく、反対」といった意見が出た。

 パネル討論では、塾生が共同体構想に賛成のグループと反対のグループに分かれ、参加者の意見を反映させながら議論を深めた。賛成派は「中国や東南アジアの経済が急速に発展する中、新しいアジアの旗振り役として日本が貢献すべき」とした一方、反対派は「人の移動の自由化が行われると、雇用や治安などに影響が出る可能性がある」と懸念を表明した。

 イベントリーダーを務めた京都大の大藤勇太さん(5年)は「日中関係はさまざまな視点から考えないといけないテーマ。参加者も積極的に議論に加わってくれて良かった」と振り返る。塾生代表の山本久瑠美さん(国際公共政策研究科・博士前期)は「1年間活動してきた仲間たちと培った発表や議論の力を発揮できた」と話した。

 【西崎啓太朗、写真も】