海鳥に装着したカメラで撮影した。仲間の鳥も写っている(提供写真)

 大阪大大学院情報科学研究科の前川卓也准教授らの研究グループは、人工知能(AI)が制御するカメラを搭載した小型機器を海鳥に取り付け、飛行中に餌や仲間を探しているとみられる様子の撮影に成功した。生物にAIを利用したカメラを取り付け、動画を撮影したのは世界初という。海鳥の餌捕りや長距離移動など従来は調査が難しかった生物の行動を、効率的に撮影できると注目されている。

 海鳥は自らが飛ぶ方向を把握し、目的地までたどり着ける「生物ナビゲーション」という仕組みを持つと考えられている。前川准教授はその仕組みを名古屋大や東北大などのデータ科学や生態学の研究者と共に調査している。

 以前から、生物にカメラを取り付けて映像を撮影することはあった。ただバッテリーの寿命が短く、生態が分かる決定的瞬間を撮影するのは難しい。前川准教授は「AIを活用すれば、生物学者が長年にわたって取り組んできた生物ナビゲーションのメカニズムの解明ができるのでは」と考え、研究を始めた。

 事前に衛星利用測位システム(GPS)を使い、撮影する海鳥の飛行ルートや飛び方の特徴を調査した。集めたデータから餌を捕るときの行動を抽出。AIに深層学習(ディープラーニング)させ、餌を捕ろうとしたときだけカメラを起動し、撮影できるようにした。

 海鳥に取り付ける小型機器の総重量は約27グラムと軽い。防水加工を施し、AIが制御する小型カメラのほか、GPSやバッテリー、加速度計なども搭載した。

 8月下旬、新潟県の粟島で産卵期のオオミズナギドリ(体長約50センチ)十数羽に機器を取り付けた。3日~1カ月後に回収したところ、海に飛び込み餌を捕っているとみられる様子や周囲を他の鳥が飛ぶ様子が映っていた。

 だが成功率は低い。5月に青森県の蕪島でウミネコに機器を取り付けたが、防水加工が不十分で失敗。粟島で調査した際も、海に飛び込んだり、巣穴を掘ったりする衝撃で機器が壊れ、撮影に成功したのはごくわずかだった。

 前川准教授は「機器を改良し、より多くのデータを集め、生物の謎に迫りたい」と話していた。

 【西崎啓太朗】