臨床研究の流れ

 大阪大の澤芳樹教授らのチームは7月20日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って心不全を治療する臨床研究を学内の審査委員会に申請した。認められれば厚生労働省に申請し、2018年中に研究を開始する。実現すれば、iPS細胞を使った心臓病治療の臨床研究としては世界初となる。

 臨床研究の対象となる患者は3人で、移植後は不整脈やがん化が起きないか検証する。安全性の高いiPS細胞から心筋細胞を作製し、厚さ0・1ミリ、直径5㌢のシート状に加工。18~75歳の虚血性心筋症患者の心臓に2、3枚のシートを移植する。研究には京都大iPS細胞研究所が作っている「iPS細胞ストック」を用いる。

 澤教授らは過去にも、患者の足から採取した筋芽細胞のシートを作製し、重症心筋症患者の心臓に移植する研究を行っていた。筋芽細胞は心筋細胞と違い拍動しないため、より重症な虚血性心筋症患者にはさらに高度な治療が求められた。澤教授らは動物実験によりiPS細胞で作った心筋細胞に心臓機能を回復する効果があることを確認。心臓の一部のように拍動するため、治療が難しかった重症の心不全患者にも効果が見込める。

 筋芽細胞の場合、採取から移植できる細胞を作製するまで1カ月以上かかるため、緊急を要する患者に用いることができないという欠点もあった。iPS細胞を使うことで、前もって心筋細胞を大量に作製し保管しておくことが可能となり、緊急時にも使用することができる。

 国内のiPS細胞を使った再生医療の研究では、理化学研究所が目の治療を実施、慶應義塾大も脊髄損傷の臨床研究を申請している。澤教授は「申請が通ればiPS細胞を使った世界初の心臓病治療となるので、着実に安全性を確認していきたい」と述べた。

 【嶋田敬史】