西畑宏紀さんによる「空海の風景」の紹介(撮影=西崎啓太朗)

 大阪外事専門学校(現・大阪大外国語学部)を卒業した作家の司馬遼太郎をしのぶ記念学術講演会が6月17日、大阪市北区のサンケイホールブリーゼで開かれた。会は毎年開かれ、今年で20回目。今回は、阪大生によるビブリオバトルが初めて行われた。

 ビブリオバトルは、発表者がお薦めの本を持ち寄って魅力を紹介する書評会。発表を聴いた人の投票で勝敗を決める。今回持ち寄る本は司馬作品に限定された。

 当日は予選を勝ち抜いた5人が、「峠」や「関ヶ原」などの司馬作品を壇上で紹介。新選組副長の土方歳三の生涯を描いた時代小説「燃えよ剣」を選んだ北田拓生さん(法・1年)は、「七里研之助やお雪といった、歴史に基づかないオリジナルの人物も登場し、楽しく読める」と魅力を語った。全員の発表が終わった後、聴衆は「どの本が一番読みたくなったか」を基準に投票した。

 最多票を集めた「チャンプ本」に輝いたのは、「空海の風景」。日本の歴史上で唯一、人類の原理にまで思想を巡らせた天才として空海が描かれている。西畑宏紀さん(外・3年)が紹介した。

 暇さえあれば司馬作品を読むという西畑さんは現在、司馬も学んだモンゴル語を勉強している。「多くの司馬ファンの方々に選んでもらえてよかった」と喜んだ。

 同会では明治大の鹿島茂専任教授(仏文学)が講演を行った。鹿島教授は、司馬作品を家族論の観点から分析。日本の家族には保守的な「直系家族型」と、自由奔放な「核家族型」があると説明した。「『竜馬がゆく』で登場する坂本龍馬に代表されるように、司馬は『核家族型』の日本人を好んだ」と指摘した。

◆司馬 遼太郎(しば・りょうたろう)1923年、大阪市生まれ。60年に「梟(ふくろう)の城」で直木賞。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」などの歴史小説や「街道をゆく」などの紀行を執筆、96年に72歳で死去。

【西崎啓太朗】