日本文化の価値みつめる講演、会場は終始和やか
司馬遼太郎記念学術講演会
     大外大主催の司馬遼太郎記念学術講演会が7月5日、大阪で開かれた。講師は河合隼雄文化庁長官と作家の柳田邦男さん。日本文化に対する2人の分析と展望で、会場は和やかな雰囲気に包まれていた。【7月5日 大阪外大新聞=UNN】

     講演のテーマは、「21世紀における日本文化の価値」。会場の大阪国際交流センター大ホールはほぼ満席だった。夏まつり当日だったためか、大学生はかなり少なく、年輩の参加者が大半だった。 

     第1部では、河合長官が「21世紀の日本文化を考える」、柳田さんが「あいまい文化の復権」と題してそれぞれ講演。河合長官は、日本文化は、多神教の影響を受け、リーダーの統率よりも全員の話し合い、調和が重要視される「中空均衡型」だと説いた。これが生きたのは阪神大震災後の人々の助け合いだという。現在の日本は、イエ制度が崩壊し原理原則を失ったため、個人を支えるものが失われ、その結果利己主義が横行していると指摘。今後は、個人を支えているものとは何かを問うべきだ、また、矛盾に堪えながらも、多様なものを煮詰める「低温発酵型」で異文化と日本文化を共存させ新しいものを生み出す必要があると述べた。
     柳田さんは、俳句の季語にはその土地の容貌、「地貌(ちぼう)」が現れており、ふくらみが感じられると述べた。ことばには大量な情報が含まれており、これがあいまいさを醸し出す。このようなふくらみをもった言葉、方言などが失われると、日本語も消えてしまうと述べた。そして最後に、あいまい文化の復権には、医療や法律分野などの専門的職業人が、専門を越えた2.5人称の視点を持つことやコミュニケーション能力を高めること、幼児期の絵本のよみきかせを推進することなど6点が必要だと訴えた。

     第2部の対談では、講師2人は親し気に「日本人のコトバ、心、魂」のテーマに沿って、絵本や日常会話におけるコミュニケーションの重要性を語った。両氏のジョークに、会場は時に笑いにつつまれた。両講師は、絵本を推進し、地域の地貌や活力を生かして日本文化の再生を図ろうと会場に呼びかけた。
     講演後、参加していた年輩の女性は、「子供達は、本を読んで考える力をつけてほしい。この日頃の思いが講演で強まった」と述べた。日本文化をみつめたいという気持ちを、講師と参加者が共有できた講演だったようだ。

    【石川尚里】




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