この講座は「大学間衛星通信ネットワーク」(SCS)を経由して全国114会場で同時に実施された。今回は、単なる講演会にとどまらず、SCSの特色である双方向性のデータ受信を活かして、各会場の参加者同士からの質問や討議も行われた。世界15か国が共同で開発している国際宇宙センターに長期滞在中の飛行士とのライブ交信を中心に、宇宙開発などについて語られた。 講座は、SCSの開発者の一人でもある近藤喜美夫教授(文部科学省メディア教育開発センター)や毛利衛さん(宇宙開発事業団)による、現在の日本の宇宙開発についてや国際宇宙ステーションの説明から始まった。説明によると、宇宙開発によって得られる利益は天体観測や地図製作など数多くあり、その中の重要なもののひとつに、無重力という地球と違った環境による新薬や材質などの研究がある。そのような研究を可能にするために国際宇宙ステーションは開発されており、日本が開発を担当する実験棟「きぼう」にも、そのための工夫が凝らされているとのこと。また、国際宇宙ステーションは科学技術的な可能性を探るためだけでなく、一般のアイデアを募集したり、芸術分野での発想・表現の可能性を探るために用いられることも、参加者との討議の中で強調された。 また、大学生が取り組んでいる宇宙開発の一例として、衛星設計コンテストや「STARSプログラム」が紹介された。衛星設計コンテストは今年で2回目となる。大学生を中心に参加を募っており、小型衛星の設計を競いあうもの。今年、2回連続で大賞を受賞した東北大の中西さんらによる流星群を多角的に観測できる衛星や、アイデア賞を受賞した東大大学院の金色さんらによる、6基の衛星でより精密で正確な三次元の地図製作に役立つ衛星が紹介された。「STARSプログラム」は来年打ち上げ予定のスペースシャトルによって行う実験を全世界の学生から募集したもの。日本からはお茶の水女大の新堀さんが選ばれた。新堀さんの実験は、宇宙に連れて行った場合のめだかの行動や影響についてで、めだかは成功例があることや、卵を温度コントロールで孵化させられること、脊椎動物であることから選んだとのこと。 そして、宇宙ステーションに滞在しているフランク=カルバートソン(米)、ウラディーミル=ニコラエビッチ=ジェジューロフ、ミハイル=チューリン(共に露)の飛行士達との交信は17分間にわたって学生の質問に答える形で行われた。学生の質問はしし座流星群を宇宙から見たらどうなるかということから環境問題への意識、精神的な負担にまで及んだ。飛行士達にはしし座流星群を始めとする様々な天体ショーの美しさや、将来的には宇宙ステーションで環境問題に関わる実験を行ってみることへの興味、閉鎖的な環境へ対応するトレーニングについてなどの返答をした。また、コミュニケーションの問題については「何年もトレーニングを積むが、それ以上に、同じ目的に向かって努力していると、自然と言葉や文化といった壁をクリアしていった」「過剰に文化の差に反応するのではなく、相手に合わせて記念日などを一緒に祝うようにしていくことで、文化的な差は縮まっていく」と語った。 最後には毛利衛さんと坂本龍一さんのテレビを通じた対談のビデオが公開された。2人は宇宙から受けるイメージや宇宙空間という厳しい状況における感情を音楽に対する考えを交えながら語った。そして、坂本さんは、宇宙に本格的に進出する時代に対しての期待について「200年前は、藩と藩がいがみあうことが当然だった。宇宙に乗りだすころには国同士がいがみ合っていたことが笑い話になっているといい」と語った。 また、当日、講座に訪れた青野繁治教官(中国語専攻)は「光ファイバーの敷設が進んでいるため、衛星放送の意義を見いだすためにも音声多重に対応するなどの積極的な活用を進めて欲しい」と設備面での充実に注文をつけた。一方、石川かおるさん(英語・3年)は「これから宇宙に住むようなことになるかも知れないが、宇宙に住むメリットと地球に住むメリットなどについても聞いてみたかった」と語った。
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