コラム・路地裏

 私たちは生活の中で常に言語ゲームをしている。先生はトイレじゃないし、「行けたら行く」はきっと行かない。先日、それを理解していることの重要性に気付いた。

 8月31日、米ラッパーのエミネムが新しいアルバム「Kamikaze」を発表した。タイトルが「神風特攻隊」に由来することはジャケットの戦闘機と「敗北より死」という日本語がよく表している。ちなみに欧米では自爆テロと特攻隊が同一視され「kamikaze」という言葉を自爆テロというセンシティブな意味で解釈する人がほとんど。しかし、そのような言葉を使ったエミネムを欧米人が問題視することはなかった。

 注目したいのは、欧米人が歌詞に同性愛者を侮辱する言葉が用いられていることには否定的だということである。つまり、欧米人はセンシティブな言葉に無頓着なのではなく、批判すべきこと(差別用語が使われたこと)を理解した上で批判しているのだ。確かに「kamikaze」はセンシティブな言葉だが、エミネムがテロや特攻隊を賛美したり、被害者を傷つける意図を持っていないということを理解しているから欧米人は「Kamikaze」を問題視しない。

 欧米人と日本人の間に文化や価値観の違いがある。しかし、話者の意図を無視していい理由にはならない。「言語は意味ではなく使用に注目しなければならない」というウィトゲンシュタインの言葉をいま一度思い出してみるべきだと思う。【谷健生】

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