【6・7月号掲載】コラム・知恵袋

 ヒット曲「クリスマス・イブ」などで知られる山下達郎のファンになって4年になる。ラジオで偶然流れた氏の曲の洗練されたメロディーにほれて以来、幾度となくアルバムを聞き直しては、その度に発見がある。名盤の懐の深さに敬服する▼ずいぶん年上のミュージシャンを好きになってしまうと避けられないのが訃報だ。氏自身は至って健康だが、長らくライブメンバーの一人として達郎サウンドを支えたドラマー青山純や、コーラスの村田和人、さらに師匠とも言うべき大滝詠一が既に鬼籍に入った▼大衆相手のポップミュージックは時代の映し鏡。「同じ世代がある時期に一つの曲を共有した」という経験が、伝説として語り継がれる。若い世代は伝説を後から追いかけることしかできず、ヒット当時への憧ればかりが募る▼しかし曲とセットで記憶される思い出は個々人で異なる。自分史の投影として音楽を楽しむのは今も昔も変わらない。部活に、恋に、進路に悩む私を達郎作品は確かに癒やしてくれた▼「数多(あまた)の名演はしっかり記録されている。残されたものは去っていった人々の思いを受け継ぎながら音楽を続けていかなければならない」と氏は力強く語る。ここでの「音楽」には生み出すことだけでなく、聴くことも含まれるだろう。ならば僕はこれからも先輩たちの音楽を聴き続ける。「失われた想い出にさえなれぬとも、決して忘れられぬかすかな輝き」たちに感謝しながら。

【瀧本善斗】

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