△実験結果の概要(京都府立医科大発表資料から作成)

 京都府立医科大は、昼夜逆転の生活を繰り返し体内時計が乱れると慢性的な炎症を起こしやすくなり、寿命が縮まりやすくなることを、マウスを用いた実験で明らかにしたと発表した。体内時計の乱れが健康にもたらす影響を明らかにすることで、深夜勤務や交代制勤務に従事する人の健康維持に役立つ可能性があるという。論文は10月13日の国際学会誌電子版に掲載された。
 八木田和弘教授(統合生理学)らのグループが行った実験では、飼育環境の照明をつけたり消したりして昼と夜を再現。昼夜の間隔を4日ごとに変えるきついシフトと、7日ごとに変えるゆるいシフトを作り、同時に630日間マウスを飼い死亡率などを比較した。
 きついシフトのマウスは周囲の光の環境に適応できず体内時計が常に乱され続ける状態となり、慢性的に強い炎症を起こしていることが分かった。また、ゆるいシフトのマウスと比べ死亡率が4・26倍高かったという。免疫機能が長期にわたり破綻したことで炎症が引き起こされ、死亡につながったと考えられる。
 実験に使用したマウスの数が少ないためさらなる研究が必要としたものの、今後の解析で体内時計の乱れと疾患リスク上昇の関係解明や心身への負担が少ない勤務シフトの開発につながる可能性があるという。
 現在、深夜勤務を含む交代制勤務者は労働者人口の2割近くを占めるといわれる。体内時計の乱れは睡眠障害だけでなくメタボリック症候群、乳がんなどさまざまな病気にかかるリスクを高めることが分かっていたが、背景にあるメカニズムは判明していなかった。       
【垣内勇哉】