試合終了後、優勝の嬉しさを噛みしめるびわこ成蹊大の選手たち(11月4日・西京極総合運動公園陸上競技場で 撮影=新貝卓丸)
選手たちに指示を出す、びわこ成蹊大・宮(右)
(11月11日・ヤンマーフィールド長居で 撮影=新貝卓丸)

 サッカーの関西学生リーグはびわこ成蹊大が4日に勝利しリーグ優勝を果たした。通年リーグ制になった2008年以降、同大の優勝は初めて。今季は持ち前の守備力に加え、縦に素早く攻撃を仕掛ける戦術が機能した。近年の課題だった得点力を克服し、昨季の7位から大きく飛躍した。

 開幕から好調を維持し、昨季の上位陣から白星を奪取。前期を終えて首位に立った。後期も開幕から3連勝し混戦の優勝争いで優位に立つ。その後下位相手に連敗を喫するが、他の上位陣も軒並み不振に陥る。運も味方に付け、悲願の初優勝を勝ち取った。

 今季の躍進の原動力となったのが全員守備、全員攻撃から繰り出す堅守速攻の戦術だ。攻撃時には守備的な選手も前線に飛び出し、守備ではFWが敵陣深くから激しくボールを奪いに掛かる。試合終盤にかけても運動量を落とさず走り切り、接戦を制した。

 攻守の戦力も充実していた。ユニバーシアード代表の宮(4年)を中心に強固な守備を形成。得点ランキングトップタイの井上(2年)や堂安(4年)が攻撃陣を引っ張った。

 ボールを奪ってから手数をかけないカウンター攻撃が奏功し、得点数は昨季の30から47に大きく増加。完封試合はリーグ2位タイの6試合と攻守がかみ合った(11月15日時点)。

 チームを率いる望月監督は選手の主体性を育む指導を続けてきた。選手自身が自チーム、相手チームを分析する。試合中には選手間で話し合い、戦い方を修正することも。「選手たちがミスをしても決して叱責(しっせき)はしない。なぜミスが起きたのか、他に選択肢はなかったかを練習から考えてもらう。サッカーをするのは結局選手たちなので、自分は彼らを見守るようにしている」。

 選手からは「もちさん」という愛称で親しまれるなど信頼も厚い。宮も「大学に入ってから、守備をまとめるコーチングや連携の取り方を自分で考えてできるようになった」と成長を実感している。

 独自の指導で栄冠を勝ち取ったが慢心はない。監督は「リーグ優勝はうれしいがまだまだ通過点。選手たちと日本一を達成したい」と決意を新たにした。12月に関東で開かれる全日本大学選手権(インカレ)でも初制覇を目指す。

 

■攻撃陣が不発阪南大V逃す

 

 昨季のリーグ王者阪南大は優勝を逃した。今季は持ち前の攻撃力が鳴りを潜め、勝ち点を落とす試合が目立った。

 前期は7勝2分2敗で首位と勝ち点3差に迫ったが、後期は下位相手に3連敗を喫するなど精彩を欠き、首位に水をあけられた。後期に限れば得点数は16(総得点は42)。昨季60得点を積み上げた戦力が今季も多く残っていることを考えると物足りない結果だ。

 一番の要因はエースFW山口一(4年)の離脱。9月の総理大臣杯で負傷し、後期は5節まで欠場すると、背番号10の個人技、得点力に頼れなくなった攻撃陣は沈黙。爆発的な攻撃力は発揮されなかった。

 現在2位の阪南大だが、2位以下は混戦。4位までに与えられるインカレ出場権の行方は分からない。6節からは山口一が復帰し、攻撃力は上向き。インカレ出場を果たすためにも攻撃陣のさらなる奮起が必須だ。

【新貝卓丸】