文部科学省の科学技術・学術政策研究所は8月、博士研究員(ポスドク)や博士号取得者の進路などに関する調査結果を公開した。博士課程修了者の7割以上が任期付きの職に就き、2015~16年度にポスドクから大学教員へ進んだ人も全体の1割未満にとどまるなど、多くの若手研究者が任期付きの不安定な職を続けている現状が浮き彫りになった。
 15年度にポスドクだった人の16年4月1日時点の就業状況は、ポスドクを継続した人が最も多く全体の70・0%。職種を変えた人が19・1%で、そのうち大学教員になったのは全体の9・4%だった。
 博士課程修了者を対象とした修了半年後の状況の調査では、回答を得た15年度の博士課程修了者4922人のうち52・3%が大学などに就職したと分かった。大学や公的研究機関などの就職者で助教として働いているのは24・1%で、任期付きの研究員が全体の71・9%。博士課程を修了しても正規の職を得るのが難しい状況が章かになった。
 博士・ポスドクのキャリア構築が難しく進学リスクが大きいと言われる中、今回の調査で雇用状況の不安定さが裏付けられた形だ。これから研究者を目指す学生には厳しい結果となった。同研究所は今後、より詳細な分析を実施するとしており、結果をまとめた最終版も公開する。
 ポスドクが対象の調査では、2015年度の雇用状況を全国1168機関に尋ね、1147の大学、研究機関から回答を得た。15年度のポスドクは延べ1万5910人で、12年度の前回調査から260人減少した。

■ポスドク
 博士号取得後、大学などで助教をはじめとした正規の職に就かず任期付きで雇われる研究員。不安定な身分と言われ、自立的に研究を行う環境も整備されていないと指摘される。
     
【垣内勇哉】