同志社大「此春寮」の正面玄関(提供=同志社大広報課)

 多くの学生寮には、自治の歴史がある。寮生は寮会やイベントを開催し、快適に過ごすため工夫してきた。一方、大学の学生獲得競争と国際化が寮の運営の在り方を変えつつある。日本人学生と留学生の異文化交流の場に活用したり、寮の運営を企業に任せたりする大学もある。時代を映し出す鏡ともいえる学生寮の「今」を探った。
【菅野史織・下島奈菜恵・新拓也・冨成朋美・西崎啓太朗・堀江由香・吉江桃花】

〈協調性・自立心 自治が育む〉
 多くの学生寮では寮生による自治が行われている。大学は集団生活を通して学生の協調性や自立心を育もうと、寮の自治を認めてきた。特に同志社大と関西大では、活発な自治活動が行われている。
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 同志社大にある六つの寮は全て自治寮。寮生から選ばれた寮務委員が中心になって運営している。入寮者は全寮合わせて158人。
 京都市上京区の此春(ししゅん)寮には現在約30人が暮らす。寮会が定期的に開かれ、寮生は必ず参加する決まりだ。会では月に1度ほどの風呂掃除とごみ出しをする当番制も敷く。
 部屋割りは入寮後の2年間は2人部屋だが、3年目からは1人部屋になるという。真剣に勉強に取り組む人や、部活漬けの人などさまざまな人が寮で生活する。寮長の酒井将史さん(同志社大・3年)は「寮でさまざまな人と生活することを通して、価値観の違いを知ることができる」と話す。
 入寮生歓迎会や新年会のほか、地域の人や卒寮生らと親睦を深めるため、寮に招く「オープンハウス」を行ったこともあった。(内容・役職は取材当時)
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 学年に縛られない深い交流があるのは、関大の女子寮「ドミトリー月が丘」。同寮は自治寮で、部屋は上級生と下級生の2人で1部屋を分け合うよう、くじ引きなどで割り振る。
 同寮では、部屋内でたわいない会話をしたり寮生同士で誕生日を祝ったりと、薄いカーテンの仕切りを越えた寮生活を楽しんでいる。
 イベントも活発だ。独自のイベントに加え、テスト後の打ち上げやスポーツ大会など、男子寮と交流できる機会も多く設けられている。イベントの運営について、寮長の土井梓実さん(関大・3年)は「伝統を引き継ぎつつ、新しいイベントも積極的に取り入れるなど工夫していきたい」と話した。

〈大学の魅力 寮で高める〉

 日本の学生寮は、学生の経済的負担を減らす目的で運用されてきた。現在でも入寮選考で家計審査をする寮は多い。同志社大の此春寮では、経済的に困窮する学生を優先的に入寮させているという。
 近年は少子化の影響で、大学間の学生獲得競争が激化。全国の大学は、大学の地元以外からも学生を呼び込むため、安い家賃で生活できる寮を積極的に活用している。
 各大学は学生に関心を持ってもらおうと、寮の快適さを向上させることにも力を入れる。プライバシーを重視する学生の要望に応え、相部屋は減り、個室の寮が増えた。
 神戸大の女子寮は個室タイプの自治寮。各部屋には風呂やトイレ、ミニキッチンが付いている。掃除や寮内放送などの当番制や門限もなく、自由度は高い。寮長の田口春香さん(神戸大・2年)は「(神戸大の寮は)洗濯機だけ共用で、ほかはアパートみたいなもの」と話す。
 個室の学生寮は、寮生同士のコミュニケーションが取りにくいという課題がある。神戸大の女子寮は、寮内に目安箱を設置し、意見を言いやすい環境を確保。集まった意見や要望などは、毎月の寮会で議論されている。