犬が日常生活で感じるストレスの有無を心拍の変動から判定する技術を、 大阪府立大の島村俊介准教授(臨床獣医学)らの研究チームが開発した。飼い主にとっては犬が心地よく過ごせる部屋の環境や、行動には現れないわずかな体調の変動を知ることができ、病気の早期発見につながると期待される。
 従来、心拍の変動からストレスの有無を判定する方法は人間には有効だったが、 犬では正確な測定ができなかった。個体差が大きく、呼吸速度も人間と異なるためだ。
 研究チームは電機メーカーのシャープと共同研究を実施。犬の興奮時と安静時の心拍の速さの違いを利用した新しい検査方法で、犬の心拍数の変動を測定した。
 実験では、興奮時に活性化し心拍を速める働きをもつ交感神経と、安静時に活性化し心拍を遅くする働きをもつ副交感神経、それぞれの働きを抑える薬を犬に投与した。実験から、心拍の変動とストレスの相関関係を初めて犬で明らかにした。
 島村准教授は「今回、普段獣医学とあまり接点のない理工系の人と研究することができ、新たな視点から課題に対処でき、成功につながった」と振り返る。
 今後は臨床実験の後、犬の体に装着して脈拍をリアルタイムで測定、結果から想定される犬のストレス状態を飼い主のスマートフォンに送信する装置を開発する予定。病気の早期発見以外にも犬が無意識下で心地よいと感じる音楽を見つけるなど、医療以外の目的にも応用できる。研究チームは数年内の実用化を目指す。
【新拓也】