日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」(委員長=杉田敦・法政大教授)は13日、軍事研究と学術の関係に関する検討の報告をウェブサイトで公表した。軍事研究に否定的な立場を取る学術会議の方針は、学問の自由に反しないなどとする結論が盛り込まれた。学術会議は検討委の審議を経て、軍事研究が学術の健全な発展を脅かす可能性を指摘する声明を3月に発表。今回の報告では検討委の審議経過をまとめた。

 報告では、学術が軍事研究と距離を置く方針について「学術的な蓄積に基づいて科学者コミュニティーが自己規律を行 うことは、個々の研究者の学問の自由を侵すものではない」と結論付けた。さらに安全保障関連の研究予算が、他の学術研究を財政的に逼迫(ひっぱく)させる可能性にも言及。研究の自主・自律や透明性が尊重される形で、民生的な研究資金を充実させることが必要とした。

 防衛装備庁は2015年に、軍事防衛と民生の両分野に応用可能な技術の基礎研究を公募し助成する「安全保障技術研究推進制度」を開始。これを受け学術会議は昨年5月、同検討委を設置。11回にわたる審議の結果を踏まえ、学術会議は3月24日に声明を出した。

 声明では、軍事研究に科学者が関与しないとした1950年と67年の声明を継承。安全保障関連の技術研究は秘密保持が求 められ、自由で開かれた研究・教育環境の維持に懸念があるとした。また同制度は、防衛装備庁の職員が研究の進捗(しんちょく)管理に関わるため「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と指摘していた。研究機関に対しては、研究が技術的・倫理的に適切か審査する制度を設けるべきだと提言している。