戦争や貧困などで文字を学ぶ機会を失った人のために、神戸市の長田公民館で開かれている識字教室「ひまわりの会」で、大学生が講師を務めている。神戸大、神戸学院大、神戸親和女子大の学生約30人が、現役や退職した中学教員らとともに運営を担う。

 会では毎週土曜日に2時間、約10人の高齢者に授業を開いている。教室は1996年に夜間中学の元教諭・桂光子さん(80)が立ち上げた。前年の阪神・淡路大震災で、文字の読めない被災者が罹災(りさい)証明を受ける際、申請に苦労しているのを見て教室を開いたという。神戸大の学生はボランティアサークル「学生震災救援隊」の参加団体「ひまわりチーム」に所属。2008年から会の活動に参加している。

 4日は江藤恒夫さん(神戸大・2年)と清水祐史さん(同・1年)が授業を担当。豆まきや恵方巻を紹介した自作の文章を教材に、含まれる漢字を解説する。学習者は、江藤さんらの板書を参考に節分の「節」などの字をノートに書き込んだ。一人一人にスタッフが付き、一緒に書き順を唱えるなど学習の手助けをした。

 さらに学習者は「どんな鬼を追い払い、どんな福が来てほしいか」をテーマに短文作りに挑戦。「病気をおいはらいたい」「健康で笑ってすごせたら」と思い思いに字をつづった。授業の合間には「最近は豆まきをしなくなったなあ」など会話も弾んだ。

 74歳の在日韓国人の女性は、昨年5月から会に通っている。「学生や勉強仲間が心を開き、話してくれる。人生の中でこんなに充実した時間はない」と授業の内容を書き留めたノートを見返しながら語った。

 授業には季節に応じて、年賀状制作や書道を取り入れることもある。会の代表を務める畑野菜緒さん(同・3年)は「神戸におばあちゃんができたみたいで楽しい。学習者の姿を見て、自分ももっと勉強したいと思う」と笑顔で話していた。vol.341