「翻刻」という言葉を知っているだろうか。翻刻とは、古文書や写本などの崩し字で書かれた書物を現代でも読める字に直すことだ。京都大古地震研究会では10日にウェブアプリの「みんなで翻刻」(https://honkoku.org)を公開し、主に地震に関する古文書の翻刻を進めている。古文書の翻刻には、ウェブを閲覧している人なら誰でも参加可能。
「みんなで翻刻」は、古文書を公開することで一般の人でも解読に関わることができるウェブアプリ。公開された文献を解読するだけでなく、分からない部分は利用者同士で教え合うなど交流も可能だ。また、大阪大が開発したスマートフォン用崩し字学習支援アプリの「KuLA」と連携しているため、初心者でも学びながら翻刻ができる。
東京大地震研究所図書室が所蔵している災害関連の資料がまとめられた「石本文庫」から画像にして約3000枚の資料が公開され、1週間で全体のおよそ1割が解読された。京都大防災研究所の加納靖之助教は「予想を上回るペースで解読が進んでいる。このペースだと目標だった石本文庫の全解読まで2カ月もかからないかもしれない」と驚きを隠せない。
古地震研究会は2012年4月に発足した。主に地震に関する文献を解読し、地震が起こった日時、場所、被害などの情報を集めている。研究会には専門分野を問わず学生や教授、大学職員、他大学の研究者などが参加している。京都大大学院理学研究科の中西一郎教授は「地震には新しい地震、古い地震といった区別はない。実際に起こった地震の記録を集めることが重要だ」と翻刻の重要性を話し、酒井春乃さん(文・4年)は「文学作品で見てきた崩し字とは違った形の崩し字を学べている」と触れてきた崩し字への感想を語った。
研究会では毎週水曜日にゼミ形式で崩し字を学んでいる。ゼミは前半部と後半部に分かれていて、前半部では「みんなで翻刻」に投稿された解読済み文献の確認。後半部では、神社などから提供された紙媒体の文献を参加者で解読する。加納助教は「過去の文献からさまざまな地震を知ることで、地震への備えが可能になるだろう」と話す。

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