【9・10月号掲載】難民問題と向き合う 伊藤智紘さん(大阪大・4年)
「自分にも何かできることがあるかもしれない」。伊藤智紘さんは、大学生が中心となり外国人労働者や難民の支援に取り組む団体「TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)」に入った動機を語った。
2016年1月1日現在、日本には不法残留者が6万人以上いるとされ、一部は各地方の収容所に収容されている。だが、被収容者の人権侵害や被収容者の中に難民がいるといった問題があるとして、難民の収容停止と収容所の待遇改善を訴える支援団体が各地にある。TRYはその一つとして、被収容者との面会や難民申請手続きの支援などの活動を続けている。面会を行うことで、被収容者の精神的な支えとなる。伊藤さんは国内の難民問題に詳しいわけではなかったが、大学入学時にTRYの活動に関心を持ち入ることを決めた。
入学当時、主に被収容者との面会を行っていた大阪府茨木市の西日本入国管理センター(現在は廃止)では、不十分な医療体制や難民の収容などの問題があった。初めて収容所を訪れた伊藤さんは「人権問題といった、普段接することのない社会的な問題の現場が、普通の街中にあることが衝撃的だった」と話す。
現在、大阪入国管理局(住之江区)で面会活動を続けている伊藤さん。面会を続けるうちに学生が活動する意義が分かったという。「面会が可能な平日の日中に時間を工面しやすいのは学生。自分が生きる社会の問題の一つとして、若者が関心を持つことが当事者を勇気付けられる」
決して楽しくはない面会。活動を続けていても何も変えられず、つらくなることもある。それでも伊藤さんは「少しは誰かの役に立てていると思う。やってきて後悔はない」と迷いなく言い切った。
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