【9・10月号掲載】企業が給付型奨学金
経済的に苦しい学生に対して、授業料の負担軽減を図るために給付・貸与される「奨学金」。現在、企業が社会貢献活動の一環として設立した、返済義務のない「給付型奨学金」に注目が集まっている。
□専攻・就職先で給付に制限なし
京都中央信用金庫が1981年に設立した公益財団法人「中信育英会」では、京都府下の大学に通う大学生を対象として、月額2円で最大3年の給付を行っている。
応募資格は「大学2年生次在学者」、「学業優秀、品行方正でありながら経済的事由によって修学が困難であること」などで、学生の専攻分野や就職先の制限はない。毎年、4月から5月中旬ごろに提出書類をもとに奨学生選考委員会の審査があり、その後財団理事長が受給にあたる学生を決定。選考結果は5月下旬までに各大学の学生課に通知され、受給が決まった学生には年8回の振り込みがある。2016年3月末現在、卒業した奨学生は649人。本年度は98人の奨学生が給付を受けている。
□「電気技術分野に寄与したい」
日新電機は今年から、電気系の研究を行う大学院修士課程1年生を対象とした奨学金給付制度を新設した。同社の創立100周年を祝う事業の一環で、電力エネルギーおよび高電圧技術分野の教育・学術研究の発展に寄与することが目的だ。「『学業が忙しく、アルバイトで稼ぐことができない学生が多い』との声があり、高度な研究に携わる大学院生を支援したい」と担当者は話す。原則2年間で、毎月4万円を支給。中信育英会と同様、卒業後の就職は自由だ。
しかし、担当者は「想定より応募人数が少なかった」と苦笑する。「学生側からは『給付型に遠慮がある』との意見があり、地方では会社の知名度があまり高くなかったため応募人数が多くなかった」。今後、学生が制度の正しい知識を持つこと、会社の知名度を向上させることが課題となりそうだ。
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