身も心も涼しくなりたいこんな猛暑には、何といってもお化け屋敷。今年のグランフロント大阪では、一風変わったホラーアトラクションが公開され、来場者の大きな注目を集めた。今月5日から9日にかけて開催された「デジタルホラーハウス2016」だ。

デジタルホラーハウスは、大阪電気通信大総合情報学部デジタルゲーム学科の魚井宏高教授と修士課程の吉川尚摩さんらを中心に制作された。最大の特徴は、バーチャルリアリティを用いて「人が動かない」お化け屋敷を実現させたことだ。体験者は車いすに乗り、心拍数計測器とヘッドフォン、バーチャルリアリティ専用のゴーグルを装着する。ゴーグルを通して廃墟の仮想空間を見ることができ、怪奇現象と不気味なお化けが待ち構える建物の中を車いすで進んでいく。車いすは実際には動かないが、車輪の動きと連動して仮想空間の中でも画面が同じように進むため、あたかもそこに自分がいるかのような恐怖を体感できる。

体験した人の中には、恐怖のあまり途中で止めてしまう人まで出てきた。一方、バーチャルリアリティ特有の酔いにより、途中で不快感を覚える人もいた。バーチャルリアリティやモーションセンサーを使った研究をしている魚井教授は、「人の手で脅かす」型のお化け屋敷にデジタルホラーハウスがどこまで近づくことができるのか挑んでいる。「最終的な目標は、歩いて体験できる仮想空間で体験者に恐怖を与えること」と魚井教授は話す。実現には多くの課題が残っているため、来年以降の制作に全力を尽していく。卒業研究の一環で制作に携わった吉川さんは、「ホラー演出の面でまだまだやりたかったことがいっぱいある。やり残したことをこれから追加していきたい」と今後の展望を語った。(聞き手=嶋田敬史)

スクリーンショット (1)のコピー
仮想空間の廃墟に巣食う子供のお化け(提供写真)

vol.318