「赤ちゃん学」という学問分野がある。心理学、哲学、医学、ロボット工学、物理学などあらゆる視点から赤ちゃんの可能性を研究し、子育てや医療の現場に還元する文理融合の新しい学問分野の創設を目指す。2001年の「日本赤ちゃん学会」設立以来、異種多様な研究者が、保育学や教育学といった現場のあり方を問うものとはまた異なる、赤ちゃん自身の持つ能力や発達のメカニズムを研究している。
 同志社大赤ちゃん学研究センター(学研都市キャンパス)は、全国で唯一の赤ちゃん学を専門とする研究機関。08年に開所、日本赤ちゃん学会理事長の小西行郎(ゆくお)氏がセンター長を務める。4月の文部科学省事業「共同利用・共同研究拠点」認定により、資料と場を全国の関連分野の研究者に提供し共同利用・共同研究を行う拠点となった。7月より共同研究の募集を行う予定だ。
 研究に加え、保育専門職や保護者への支援にも力を入れている。神戸親和女子大やけいはんなプラザなどで定期講座を開催。また地域との結びつきも強く、関西文化学術研究都市にある複数の企業とのコラボレーションや地域住民を対象としたイベントを実施している。特任准教授の加藤正晴さんは「お母さんはとても忙しいので外に答えを求めてしまうが、一歩離れた立場で赤ちゃんを捉える視点を伝えたい。そこから自分なりの答えの出し方を見つけることができれば、子育てをより楽しめるかもしれない」と願いを込める。「より多くの人に、赤ちゃんはいろいろなことができると知ってほしい。次世代を担う学生への赤ちゃん学の知名度を高め、研究においても積極的に関わっていきたい」と話す。