身近な問題にも関わらず話題に上ることが少ないエイズは、性的接触によるものがほとんど。検査・相談場所が多く、正しい知識で予防できる病気の一つだ。
 エイズは、HIV(エイズウイルス)の感染で起こる病気の総称。ウイルスの増加に伴い免疫力が低下し、健康な状態では発症しない感染症など多くの病気にかかりやすくなる。ウイルス感染から発症まで、数年から10年程度の無症候期があることが特徴だ。
 厚生労働省エイズ動向委員会の2014年のデータによると、新規HIV感染者・エイズ患者の報告数は全国で年間1546件。年齢別に見ると、20歳代は398件と全体の25・7%を占めている。大学生にとってHIVは案外身近なものだが、HIVと人権・情報センター副理事長の尾澤るみ子さんは「若い子は知識がなさすぎる」と語る。エイズの名前すら知らない学生もいるという。
 HIV感染の多くは性的接触。予防にはコンドームの適切な使用などが有効だ。HIVの感染が気になる場合は、保健所で無料かつ匿名の相談・検査が受けられる。保健所の他にも、「chotCASTなんば」では週4日の検査や、毎週金曜日午後6時から午後8時の間での電話相談を受け付けたり、10代のための健康相談ができる「ティーンズルーム」を設置したりしている。大学の組織でも、大阪大保健センターは、他の一般的な疾患と同様に相談を受け付けている。
 早期発見がエイズの発症を予防したり、遅らせたりすることにつながる。しかし、検査を怠ったがために、気が付いたらエイズを発症しているという例が後を絶たない。阪大保健センターの山本陵平さんは「一般的に感染症は感染ルートさえ押さえておけば大丈夫。エイズも同じ」と話す。
 尾澤さんは取材の中でたびたび、性教育の遅れを指摘した。「中学生に教えるのは『予防にはコンドームの使用が有効です』だけ。高校生になってもコンドームの使い方を正しく学校で教わることは少ない」。山本さんは「科学的に適切な知識を持っていれば、(感染を)心配することはない」とも話す。知識が予防につながるエイズ。適切な情報を得ておくことが大切だ。