和歌山大では、提携した地域に残る写真やチラシなどをデジタル化して後世に残す「デジタルアーカイブ事業」を始めた。学生や大学の関係者が、地域を回って集めたものを資料化し保存する。
 「日常生活の記録は(日々から)意識しておかないと消えてしまう」と話すのは事業を進める和歌山大附属図書館館長の渡部幹雄さん。「(資料の)使い方は後世の人が決めれば良いが、記録をとっておかないとどうしようもない」。大学の地域貢献にもつながるとして、同事業は始まった。手始めに和歌山県の九度山町や那智勝浦町と連携して事業を進めている。
 集めるものは「二次資料化できるもの」。写真や集落の広報などから、チラシ、ビラの原型となった引き札まで。人形なども写真に収め保存する。那智勝浦での調査では、小説家で詩人の佐藤春夫やゴジラのテーマで有名な伊福部昭が制作に関係した中学校歌の手書きの楽譜が出てきたことも。「大事なものは、日常にありふれたものの中にも残っている」と渡部さんは話す。
 学生も地域での調査に参加している。自分たちのやっていることをプレゼンし、記録に残しておくべき事項を地域の人から聞き取る。必要な情報を的確に選び出す、相手から情報を引き出すといったスキルは将来にも役立つ。
 渡部さんは「座学もいいけど地域に出てトライもしてほしい。失敗してもそれが糧になるから」と語った。