多くの大学では、キャリアセンターや生協などが講座の開講や独自の資格取得支援を展開し、資格学校と同等のクオリティーの授業を比較的安価に受講できる。6月現在、13講座を開講している関西大のエクステンション・リードセンターでは、学生や社会のニーズに対応した支援が充実している。
 特徴の一つとして勉強の継続を支援するため、割引制度を設けている。「資格講座再受講割引制度」では指定された講座のいずれかを受講すれば、次回受講をする際には同一講座でなくとも受講料が1割引きになる。事務職員の南由里子さんは「さらなるスキルアップを目指して違う講座を受講する学生は多い」と話す。
 関大生が受講しやすいカリキュラムや環境を作る他に、社会のニーズに対応する講座にも力を入れている。近年、語学力が求められるようになり、受講者が増加傾向にあるTOEICやTOEFL、IELTS対応の英語テスト対策講座だ。海外留学や就活など各自の取得目的に合わせて受講できるよう、計20クラスが設けられている。フィジーやフィリピン・セブ島、オーストラリア・シドニーでの海外滞在型プログラムでは、短期集中の授業や現地での日常生活を通じて成績の向上を狙う。
 リードセンターには「就活に有利な資格はあるのか」といった質問が寄せられるという。事務長の荒堀善文さんは、英語運用能力を表すTOEICや、会計経理の基礎知識を示す簿記検定がどの業界でも必要とされるという見解を示しつつも、「この資格がベストというものはない。肝心なことはどう生かすかだ」と語る。志望する職業で必要とされる専門的な資格や能力、企業が求めている要素を含めた総合的な「人間力」が試される、と付け加えた。
 自身の人間力をアピールするための付加価値――。企業が求める条件や人材像を冷静に分析した上で、大学が行う支援を活用するのも一つの手段かもしれない。

・編集後記
 経団連の指針変更を受け、6月から2017年春卒業予定の学生を対象とした企業の選考が開始された。就活生にとって勝負の時期となり、就活生でない学生も少しずつ就活を意識し始める頃かもしれない。
 アンケートや学生への聞き取り調査から「資格さえあれば就活で有利になる」という考える学生が多いように感じた。だが自らの将来像が明確でないまま資格を取得しても、目的意識が曖昧なため就活で有利になるとは言えない。
 志望の職種で必要な資格を取得しているのであれば、ある程度は選考で加味
されるかもしれない。だが、自分の「人間力」を学生時代にどのように養ってきたのかを企業に伝えることが就活において大切であり、資格取得の過程で自身の能力や考え方などをどう磨いてきたかが問われる。
 リードセンターの荒堀さんは「学業に励み、学生生活を充実させることが大切。資格取得でも就活でも、学生生活の中で計画的に準備することが肝心だ」と、将来設計の重要性を語る。何から始めればよいか悩んでいる学生は、大学で資格取得や就活支援をしている部署に足を運ぶのも手だろう。
 一人一人の夢が異なるように、資格の生かし方も十人十色。資格という強みを活用するため、自分の将来と向き合うことが重要だ。