京都大野球部の伝統「自分たちで考えて取り組む野球」。秋のリーグ戦で唯一勝ち星を挙げたエースの大山晟弥(せいや)(工・2年)も京大野球部の一員として、そのスタイルを大切にしている。

 自分で課題を見つけ、解決策を考え、実行することを常に念頭に置いているという。ある日、京大野球部には他大と比べ体格の良い選手が少ないと気付き、米を多く食べるように心掛けた。体重を約3㌔増やし、球速も上がった。

 春季リーグを振り返り、自分が試合中盤から打ち込まれてしまう傾向があることを発見。スタミナをつけて長いイニングを継続して投げられるようにするため、練習での投げ込みを増やした。練習の成果は秋のリーグ戦で早速表れ、前年の春・秋を連覇した立命館大相手に自身初の完投勝利を収めた。しかし本人は「手応えはあったが、自分はまだまだだと実感したほうが大きかった。球速やパワーなど全てが足りない」と悔しげな表情で話す。

 大山は子供のころ野球があまり好きではなかった。始めたきっかけは明確に思い出せない。それでも野球を続ける理由は「もっとうまくなりたいと思い続けているから」。向上心と学びを怠らない姿勢が成長へとつながっている。

 工学部に所属しているため、実験など時間を多く必要とする授業が頻繁にあるという大山。全体練習に参加することが難しい。だが、「こういう形で練習に取り組むことになると分かって野球部に入ったので、(勉強との両立は)大きな悩みではない」と語る。

 ことしのチーム目標は30季連続となっているリーグ最下位からの脱出。自身の目標は春季リーグで50イニング以上投げることだ。

 3年生を目前にして、先輩としての自覚も強く芽生えた。「昨年までは先輩に引っ張ってもらっていた。ことしは、経験を積んだ自分が後輩を引っ張っていく年にしたい」。チームのため、さらなる成長を目指す。