完全養殖のクロマグロ「近大マグロ」など、数多くの魚の研究に取り組む近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)。2013年には「社会に対して率先して養殖魚の価値を問いたい」と、養殖魚専門の料理店を大阪と東京・銀座にオープンし、「研究成果」を実際に味わえる場の提供も始めた。

 同料理店では「近大マグロ」など、白浜や同県串本町の水産研究所で育てられた養殖魚をさまざまなメニューで用意。生産履歴がはっきりしているため、安全性が高い。刺身やステーキ、グラタンなど、和洋問わず幅広い料理がメニューに並ぶ。

  店舗で人気の魚はマグロやシマアジなど。調理の際も魚そのものの良さが伝わるように、シンプルな料理を心がける。また、大阪店の店長を務める羽島俊之さんは「養殖魚は海の資源の枯渇を防げる」と環境に優しい点もアピールする。

  近畿大の養殖への取り組みは戦後にさかのぼる。世耕弘一総長(当時)の「海を耕し、海産物を生産しなければ日本の未来はない」という理念の下、1948年に臨海研究所(現近畿大学水産研究所)を開設。水産養殖において多くの実績を残してきた。今後は同大が掲げる「実学教育」として、学生の実践の場としても活用していく。