【3・4月号掲載】斜陽産業への光となるか 大学×第一次産業①
高度経済成長期以降、年々従事者減少の一途をたどっている第一次産業。そんな中、学生や大学がキャンパスの内外を問わず主体的に農林水産業に関する活動を行っている。
■篠山の農業を活性 「にしき恋」
JR丹波大山駅(兵庫県篠山市)から広い田畑を眺めつつ歩くこと約20分。住宅が並ぶ一角に、同市のまちづくり協議会が所有する施設「みなみ・ほっと・サロン」がある。神戸大生が中心となり活動を行う農業サークル「にしき恋」の活動拠点だ。名前の由来は活動場所の西紀南地区から。
神戸大農学部の授業「実践農学入門」がサークル創立のきっかけだった。同大が地域連携協定を結ぶ篠山市の農家の元を訪れ、1年を通して実際に農業を学んでいく体験型授業で、2012年度には篠山名産「丹波黒大豆」の原産地である西紀南地区を訪れた。その後「授業だけの関係ではなく継続して同地区に関わっていきたい」と、13年1月に同地区の「みなみ・ほっと・サロン」を拠点に設立した。
にしき恋の主な活動は農家でのボランティア。農作業の手伝いや清掃活動などを行い、地域の農家との交流を図っている。また、にしき恋が所有している畑では丹波黒大豆や米、季節ごとの野菜などを栽培している。収穫した黒大豆は、同大や活動拠点近くの市場で販売を行うこともあるという。他にも地域のイベントに参加するなど、同地区の活性化に一役買っている。
「農業者目線で物事を見るようになり、地域に愛着が湧いた」と現代表の吉田晴紀さん(神戸大・2年)は語る。4月から新代表となるのは岩崎智彦さん(同・1年)。「篠山、西紀、そして私たちのサークルのことをもっと知ってもらえるよう活動していく」と話した。活動は毎週土曜日・日曜日と祝日。
■五感で森林を実感 「森なかま」
「全ての学生が森林に興味を持ち、林業を身近に感じることができる環境をつくりたい」。そんな願いを込めて、間伐や植樹など森林整備に取り組むのは、京都府立大のボランティアサークル「森なかま」だ。所属する136人の学生が、学内の演習林や卒業生が保有する山で森づくりを行う。
同大生命環境学部には森林科学科があり、森林に興味を持って入学してくる学生が多いという。しかし、大学が所有する演習林を利用する機会はほとんどない。実際に林業を体験する目的で「森なかま」は発足した。
「初めて森に入って作業をしたときの『わくわく感』は今でも鮮明に覚えている」と代表の原田喜一さん(京都府立大・2年)は話す。「自分よりも大きな木を人の力で切る技術に感動し、木が倒れる音で自然の大きさを感じた」。五感で森や林業で自然を体感した瞬間だった。普段の生活では味わうことのできない特別な経験。山と関わる中で、季節を感じることも多いという。
当初はメンバーのほとんどが森林学科の学生だったが、最近は他学科の学生も増えつつある。「これからは学外の団体にも、より日本の山や森林の魅力を広めることが目標」と原田さんは語る。森林を身近に感じることができる場の提供を目指す。
■漁業との交流を 関学大田和ゼミ
関西学院大文学部の田和正孝ゼミは2月22日・23日に、兵庫県家島諸島の坊勢島でゼミ合宿を行った。漁協での聞き取りなど、ゼミ生は合宿を通して「漁業」という仕事について学んだ。
田和教授の専門は人文地理学の漁業地理学。3年前から摂津播磨地区漁業協同組合の青壮年部連合会と交流を行い、ゼミの演習時間に兵庫県の漁業者との関係をつくるなど、交流活動の機会を設けてきた。
今回の合宿では初日に漁協で話を聞き、魚の水揚げを観察した。翌日にはのり養殖の刈り取り風景を船の上から観察した後、のり加工場を見学。その後、近くの集落でフィールドワークを行った。合宿に参加した柴切克樹さん(関学大・3年)は「漁業でも設備投資や売上などにおいて億単位のお金が動いていて、先代や先輩漁業者の技を体得しなくては簡単に利益が出せないと感じた」と、多くのことを学んだようだ。
「漁業関係者は、魚食の普及活動など、大学との交流を求めている」と田和教授。学生が漁業を学ぶ意義についても「海という自然を相手に日々活動し、膨大な知識に基づいた行動や活動を学ぶことができる」と指摘した。
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