昨年、全国の梅毒患者が26年ぶりに2千人を超えた。感染者数は伸び続け、2638人もの感染者が昨年1年間で確認された。女性の感染者数や、20代前半の男女の感染者数も前年比約2倍に。学生を含む若年層のリスク認知が課題となっている。

■重症のリスクも

 梅毒は膣性交だけでなく、口や肛門を使った性交でもうつる。キスでも感染する可能性がある。

 感染から約3週間後、無痛性のしこりやリンパ節の腫れなどの症状が現れる。3カ月後には全身に皮疹や脱毛症にも発展。放置すれば症状はなくなるが水面下で進行し、心臓や神経、目などに重い障害が出る。

 皮膚科や産婦人科などで検診を受けることが適切な判断につながるが、検査キットを購入すれば自宅でも検査が可能だ。現在は抗生物質による治療法が確立している。

■大学の取り組み

 性感染症に感染しているのではないか——。不安を感じても、誰かに相談しづらいと思う学生は少なくないと関西大の保健管理センターの担当者は言う。同センターでは直接訪れる他、電話での相談も受け付けている。

 同センターでは近年、妊娠や性感染症に関する相談が増えているという。「性に対して開放的になっているのでは」と担当者は不安を漏らす。

 「感染症の知識があれば自分や相手を守れる」と担当者は指摘する。相手や自身の症状から感染の可能性を察知し、自覚を持って検査・治療することが重要だ。また、治療や検査はできる限り自身だけでなく、うつした・うつされた可能性のある相手にも受けてもらうことも大切だという。

 大学では学内にリーフレットやポスターを設置し、外部の相談窓口を紹介したり、検査を呼び掛けたりしている。ただ、デリケートな問題のため、大学をあげて大規模な啓発活動をするのは難しい。「学生の目に触れるようにする必要がある」と担当者は話す。

 大学はあくまで高等教育機関。担当者は「アドバイスはするが、後は本人の自覚次第だ」とも語る。性交渉に付随するリスクを認知し、疑いがある場合は早期に対応する必要がある。