【11月号掲載】クラウドファンディング 学生も活用
インターネットを通して不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」が広まっている。学生向けを掲げるサービスも登場するなど、学生がクラウドファンディングに取り組むことは珍しくなくなりつつある。
順調に支援広がる
「ラオスの幼稚園にある図書スペースに絵本を100冊寄付したい」——。学生団体Infinite Connectionはことしの夏、国内のクラウドファンディングサービスサイトでプロジェクトを立ち上げた。絵本100冊を購入してラオス語の翻訳シートを貼り、現地の幼稚園に寄付する、というものだ。
普段は、募金活動やチャリティーイベントの開催を通じて集めた資金をもとに、ラオス南部のノンテノイ村への支援活動を行っている。 教育を中心に支援を行い、これまでに幼稚園、小学校の建設などに取り組んできた。何度か絵本の寄付もしていたが、まだまだ数が少ないのが現状。より多くの子どもたちが絵本に触れることができるようにと、今回のプロジェクトを行った。
TwitterやFacebookでプロジェクトの拡散を図ったが、「もともと(団体を)応援してくれている人たちが広めてくれた点に助けられた」と代表の福永愛さん(関西学院大・2年)は話す。開始から4日で目標金額の3割を達成するなど、順調に資金が集まっていていった。1カ月後の期限には、目標の15万円を超える18万5千円が集まり、プロジェクトが成立。用意した絵本は、来年3月にラオスへ届ける予定だという。
信頼獲得に苦戦か
学生団体CHADは、学校体育の普及を図るため、カンボジア北西部の小学校での運動会を企画。用具の調達や輸送、共同で企画を行った現地の学生の移動や宿泊などで多くの費用が掛かるため、クラウドファンディングで資金を集めることにした。
サイトでプロジェクトを立ち上げたが、「コネクションや一定の信頼を得ることが重要だと感じた」と代表の長谷川貴大さん(同志社大・3年)は振り返る。20万円を目標としたが、わずかな金額しか集まらないないまま期限を迎えてしまう。クラウドファンディングは失敗に終わり、資金は得られなかった。
偶然、社内で運動会を実施している企業から用具の貸し出しなどの協力を得たこともあり、何とか費用を工面。予定通り企画を行うことができた。「ある程度の金額が集まっていたら、信頼も得られたのでは」。今回の経験を、今後のプロジェクトに生かしていきたいという。
報告と見通し確実に
「学生の社会的な信用はゼロだが、(クラウドファンディングなら)思いのあるお金が集まる。非常に良いことだと思う」と神戸大大学院経営学研究科の保田隆明准教授は話す。クラウドファンディングの登場によって、これまでよりも多くの人が資金を得る機会が生まれた。
だが、注意点もある。保田准教授は、出資者にプロジェクトの成果を報告する必要があることを強調。「学生のようにビジネスに慣れていない人の場合、プロジェクトを行ってそのまま終わってしまうケースがある」と指摘する。また、見通しが甘く、プロジェクトがとん挫したり、資金が足りなくなったりするケースも見受けられるという。「出資する側からしたら、見通しが甘いと困る。特に学生は保守的にやった方がいい」。
どんなプロジェクトを行うかは自由だが、共感を呼べないものや出資するに値しないと判断されるものには、資金は集まらない。ただ、資金が集まらなくても「どこが駄目かが分かれば、それも学習のプロセスになるので良いのでは」と保田准教授は話した。
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