vol.279

 京都府立医科大学眼科学教室の加藤浩晃医師が監修した、眼科領域での遠隔診断補助サポートシステム「メミルちゃん」が10月10日(目の愛護デー)から開始された。医師の専用アプリで、非眼科医が眼科医に症状の問診・写真などの情報を専用アプリ上で送信することで、眼科医からアドバイスを受けられるというものだ。

 メミルちゃんを通じて行われるサポートによって専門外の医師が眼科の診察をする際に大きな助けとなることが期待されている。「医師が眼科医に紹介を行う際の労力・時間の短縮になるだろう」と加藤医師。メミルちゃんのアプリには発症時間や症状、現在使っている薬など、診断に必要なテンプレートがあらかじめ用意されている。医師が別の医師に患者の状態について伝える紹介状を書くのに約17分かかると言われているが、メミルちゃんはたったの2分で患者の状態を伝えることができる。
海外のデータでは、日本の総合診療医にあたるGP(General Practitioner)が眼科の診察をする際に誤診が60%を超え、その誤診のうち深刻なケースが約10%にも上るという報告がある。一方で、僻地医療や在宅医療の現場では、人的資源の不足が問題視され続けていた。地方では、医師不足のため、内科や外科などを専門とする医師が様々な領域の診察をしているのが現状だ。在宅患者の往診をする眼科医も多くはない。そんな中、約2年前から、加藤医師は内科医など眼科を専門としない医師からメールで眼科診察の相談を受けていた。「これをシステム化できたらいいと思っていた」。そんな思いから株式会社エクスメディオ(高知県香南市)とともに、メミルちゃんの開発に至った。また、エクスメディオは、2月に皮膚疾患遠隔診断支援アプリ「ヒフミル君」を開始した。

 「ヒフミル君」、「メミルちゃん」のアプリを通した遠隔診療サポートでは、専門診療科での診療歴が5年以上の皮膚科医や眼科医らが24時間以内に返信する。メンバーは、主に病院を定年退職した後だったり産休中で育児をしていたりして、自宅にいることが多く時間の取りやすい医師ら。また、事業に賛同した元 大学教授や病院の常勤医師もいる。

 今後について、加藤医師は「まずは、メミルちゃんをいろんな人に知ってもらいたい。眼科診察は実は眼科医だけが行っているのではなく、眼科以外の医師も行うことがある。そして、眼科を専門としない医師は眼科診察をせざるを得ない場面で診察に困ることも多い。困っている医師のところにサービスが届くように、広めていきたい」と話した。2012年の厚生労働省が発表したデータでは、日本の医師数は約30万人。その中で、現在の利用者は数千人だ。「より多くの医師に知ってもらえるようにしていきたい」と意気込む。